こうした経験から、10代後半から20代になっても、中学受験の失敗による負の感情を引きずる人がいると高濱さんは指摘する。しかし、誰しもが合格を手に入れたいし、親子で真剣に取り組んだからこそ、結果が出なくて落ち込むのは仕方のないことでもある。

「実は不合格だったときこそ、親の覚悟の見せどころ。子どもが見ていない場所で思い切り泣いてもいいと思います。でもそれは3日間限定で! そのあとは気持ちをスパッと切り替えましょう。志望度の低い学校に行くことになっても、『最高に楽しい6年間にしよう!』と、親子で未来を向いて。『部活は何がいい?』『この行事、楽しみだね』など、ワクワクできる会話を心がけてください」

 先日、ある中3の生徒の母親が高濱さんを訪ねてきた。

「うちの子は第1志望に進学できなかったけど、毎日元気に学校に行って、友達と幸せそうに過ごしている。それだけでいいなって思えるんです」としみじみ報告してくれたという。

「そのお母さんは中学受験を振り返って、『あのとき私、おかしくなっていました』なんて苦笑していました。わが家では何のために中学受験に挑むのか。親御さんもときには立ち止まって、自身に問い直してみてはどうでしょう。すべては子どもの幸せが目的のはずです」

※AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2024』より

(文・AERAムック教育編集部)

偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び 2024 (AERAムック)

朝日新聞出版

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