「中学受験は親の受験」と言いますが、わが子を志望校に合格させることだけが目標になってしまうと、思わぬ落とし穴に陥る危険性も……。AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2024』(朝日新聞出版)では、長年受験指導に当たってきた花まる学習会の高濱正伸さんに、中学受験の意義についてうかがいました。

MENU 「12歳」という年齢から中学受験の意義を考える 中学受験で子の自己肯定感をつぶしてしまう保護者とは

*   *  *

「中学受験をスタートする前に、何のために挑戦するのか、親自身が深く考えることが大切です」

 そう語るのは、30年以上にわたって子どもたちの受験をサポートしてきた「花まる学習会」の高濱正伸さんだ。

「まわりが始めたからなんとなくうちも……という親御さんもいますが、それでは本質を見失いかねない。わが子のどんなところを伸ばしたいのか、どんな環境で学ばせたいのかなど、理由を明確に言語化することが重要です」

 中学受験をするかしないかの結論を出すには、夫婦でしっかり話し合うことも欠かせないと言う。

「子どもが大切だという思いは夫婦で同じはずです。いざやると決意したら、家族みんなで一生懸命応援する空気をつくってほしいですね」

「12歳」という年齢から中学受験の意義を考える

 長く子どもたちを見てきた経験から、高濱さんは「子どもの学力が一番鍛えられるのは12歳、ちょうど小学6年生ぐらいの時期」だと見ている。受験するしないにかかわらず、この時期に勉強に励むことには大きな意味があると断言する。

「中学受験では、見たことのない難問に次々に取り組むことになります。その過程で子どもは必ず成長しますから、受験に挑む価値は大いにあると思います」

 ただし、12歳はまだまだ子どもでもある。成長の度合いにも個人差が大きくあることは理解しておきたい。第1志望に受かる子どもたちには、次のような共通点があると高濱さんは続ける。

「中学受験で結果を出した私の教え子たちは、自主性のある子どもが多いですね。ある程度自分で計画を立てて実行できるし、膨大な問題を解いても全然へこたれない。さらには『先生、もっと難しい問題を出してください!』と言いにくる子も少なくありません」

次のページへ「遅咲き」タイプの場合は「戦略的撤退」も
1 2 3