一方で、まだ精神的に幼く、根を詰めて勉強に集中することができない子どももいる。国語では人物の機微が読み取れなかったり、歴史では出来事の背景を理解できなかったりもするそうだ。わが子がこうした「遅咲き」タイプだった場合は、「戦略的撤退」を選ぶのも保護者の役目かもしれない。

「この子がグンと伸びるタイミングは本当に今なのか、しっかり見極めて。たとえそれが小6の夏だったとしても、3年後の成長にかけて高校受験を選ぶことは、決して悪い決断ではありません」

 保護者としては「小6までやってきたのに?」と考えてしまいそうだが、「そこまで勉強を頑張ってきたことは絶対に無駄にならない」と高濱さん。

「中学受験を断念しても、地元の公立中学に入学すると成績はたいてい最上位。『自分、すごく勉強デキるじゃん!』と自信満々になって、子どもはもっともっと頑張っちゃうんですね。そして、この勢いでトップの高校を狙おうと思えるのです」

 実際に、中学受験から撤退した子どもたちが、高校受験で公立・私立問わずトップ校に進学するケースも珍しくない。その先で合格した大学も、中学受験組と変わらない例も多いという。

中学受験で子の自己肯定感をつぶしてしまう保護者とは

 高濱さんは「子どもの自己肯定感は14、15歳までに築かれる」と考えている。

「この繊細な年頃に『自分にはこんなにも愛してくれる人がいる』『自分が生きている世界って楽しい』『頑張れば何でもできるんだ!』という気持ちが持てれば最高です。自己肯定感さえ確固になれば、それまでは勉強や苦手なことから逃げていたような子でも、自分からちゃんと取り組めるようになるのです」

 しかし、中学受験をする子どもは12歳で他人と自分を比べる機会も多くなる。ここで子どもの自己肯定感を保ち高めることができるかどうかには、保護者の行動が大きく影響するという。

「子どもの自己肯定感をつぶしてしまう親御さんは、『志望校に受かる』という結果だけにこだわりすぎています。よく考えれば、目標に向かって一生懸命勉強すること自体が素晴らしいこと。でも合格だけが目標になると、それがかなわなかったとき、親自身が激しく落ち込んでしまいます。子どもは基本的に親を喜ばせたいと考えていますから、不合格で親が沈んでいれば『僕が合格できなかったからお母さんをがっかりさせてしまった』と自分を責めてしまうのです」

次のページへ不合格だったときこそ親の覚悟の見せどころ
1 2 3