シカ、イノシシ、サルなどの野生動物が、大都市圏に出没というニュースがよく聞かれるようになった。シカやイノシシは近づくと危険なので出没すると大騒ぎになる。一方、タヌキやアナグマのように小型で人にあまり害を及ぼさない動物は、すでに都市の森や周辺の住宅街にまでしっかりと分布を広げている。では、都市に進出した動物はどんな生活をしているのだろう? 現在好評発売中の小中学生のためのニュースマガジン『ジュニアエラ7月号』(朝日新聞出版)から紹介する。
【写真】可愛らしいタヌキを見つけても、そっと見守ろう* * *
「都市」と「山間部」のタヌキとアナグマの食事を調査
東京農工大学大学院特別研究生の大杉滋さんと小池伸介教授らの国際共同研究チームは、「山間部の森林」と、住宅街に接した「都市の森林」にすむタヌキとアナグマの食事のしかたを調査して、興味深い事実を明らかにした。どんなことがわかったのだろう?
タヌキもアナグマ(ニホンアナグマ)も木登りが得意ではない動物で、地面近くの昆虫や、木から落ちてきた果実を食べている。とくに果実は主食なので、大杉滋さんと小池伸介教授らはこれらの動物がどのように果実を食べているのか、二つの調査を行った。
(1)1回の食事にかける時間を調べる
6月ごろに熟して落ちるヤマザクラの実を食べるときに、山間部の森林と都市の森林で、タヌキとアナグマが1回の食事にかける時間を調べた。山間部の森林は、東京都八王子市の森林総合研究所の試験林、都市の森林は東京都三鷹市にある国際基督教大学(ICU)キャンパス内の森林だ。現れた動物を感知し自動撮影するカメラを設置。それぞれの食事の様子を録画した。
山間部の森林ではタヌキは61回、アナグマは63回、都市の森林ではタヌキは23回、アナグマは24回、ヤマザクラの実を食べる様子が録画されていた。それらを詳しく調べると、都市の森林にすむタヌキとアナグマは、山間部の森林よりも夜間に食事をすることが多かった。さらに、1回あたりの食事にかける時間は、タヌキもアナグマも、都市の森林では山間部の森林より短いことがわかった(図1)。
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