(2)都市の森林で食事をする場所を調べる
ICUの森林の中で、タヌキとアナグマがどのような木の下で食事をしているかを調べた。この調査は秋に行い、ムクノキとイチョウの実を食べる様子を、自動撮影カメラで録画した。木の実を食べる動物は、効率よく食事ができるように実がたくさんなった木を選ぶのがふつうだ。しかし、警戒心の強い動物は周囲からの見通しを気にするとも考えられる。そこで、実がたくさんなった木を選ぶのか、それとも根元にやぶが茂って周囲からの見通しが悪い木を選ぶのかを調べた。
タヌキでは計397回(イチョウで316回、ムクノキで81回)、アナグマでは144回(イチョウで12回、ムクノキで132回)の食事の様子が録画されていた。それらを分析すると、タヌキもアナグマも実がたくさんなった木を選ぶのではなく、根元にやぶが茂り周囲から見通しの悪い木を選んで、実を食べていることがわかった。
動物は人間をよく見て都市に適応している
(1)、(2)の結果はどんなことを意味するのだろう? 小池教授は次のように語っている。
「タヌキもアナグマも、さまざまな環境に比較的、適応しやすい動物です。しかし、人間の活動が盛んな都市に、どのように適応しているか、よくわかっていませんでした。二つの調査からは、都市ではタヌキやアナグマが人間を避けるように、素早くこっそりと食事をしていることが明らかになりました。彼らは、私たちが想像する以上に人間をよく観察しているのかもしれません。どこまで人間の生活圏に入っても大丈夫か試しながら、人間の反応を注意深く見て都市の環境に適応しているのだと思います。今回は、食べる行動だけに焦点を当てましたが、もし食べる量が総量として減っているのであれば、生まれる子の数が少なくなる可能性や寿命が短くなっている可能性もあります。今後、一回に産む子の数なども調べていくと、彼らは彼らなりに苦労して、都市にすんでいることがわかってくるかもしれません」
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