安浪:なるほど。脳を休ませるには、横にならなくても目から情報が入ってこない状態をつくってあげればよいということですね。
枝川:椅子に座ったまま目をつむって、おへそを前に出す感覚で背筋をすっと伸ばす姿勢をとるのも、身体感覚が変わって、気持ちの切り替えという意味ではいいですよ。
安浪:ミスというのも集中力と関係あると思うのですが、試験当日に緊張して凡ミスをしたり、考えられないような転記ミスをしたりする子もいるんです。ミスを防ぐには、頭の中で声を出して読むのがいいともいわれますが、これはやっぱり効果的なんですか?
枝川:頭の中で読むのはいいですね。脳の使い方でいうと、「作業に注意を向ける」ことがミスをなくすにはいいんです。書きながら違うことを考えていると、脳の中の注意がそちらに向いて作業がおろそかになる。それがミスを呼びますから。その意味では、指で文字を追って、指先に注意を向ける「指さし確認」も効果的です。
安浪:食事面ではいかがでしょう?
枝川:脳や体の部品をつくってくれる炭水化物とたんぱく質と脂質の3大栄養素をバランスよく取ることがまず大事ですし、脳の構成を考えると脂質も大切です。とくにDHA(ドコサヘキサエン酸)のようなオメガ3のアブラは必要ですね。これが長期的に大事にしてほしいことです。
塾での勉強能率を上げるとか、試験当日にパフォーマンスを保つといった短期的な効果で考えると、早い時間で脳のエネルギーに変わってくれる炭水化物を上手に使うこと。糖類もそうです。これらは食べてからエネルギーに変換されるまでの時間が短いんですね。ここ一番で集中力を高めたいときは、おにぎりやバナナ、甘い物を食べるといいんです。
一方で、炭水化物や糖類は、血中にエネルギー源となるブドウ糖をガッと増やしてくれるけれども、減るのも早いんです。血糖が下がってくると、イライラして、脳の働きも落ちてきます。
安浪:血糖が上がって、下がるまでってどのくらいの時間なんですか?
枝川:どのくらい空腹だったかにもよるのですが、口にしてから血糖が下がるまでは大体1時間くらいとされています。炭水化物に脂質を加えると、血糖の下がり方はゆるやかになります。
安浪:ということは、おにぎりに唐揚げやウィンナーといった油ものをつけてあげるといい?
枝川:そうですね。それから、ご飯は冷たいほうが糖の吸収がやわらぎます。なので、コンビニでご飯を買うにしても、レンジで温めないほうが脳の働きも安定しやすいでしょう。
安浪:試験当日などはとくに、血糖が下がりにくい食事を持たせてあげたいですね。油ものをおかずにつける、ご飯は冷たいほうがいいというお話は、親御さんにも参考になると思います。ありがとうございました。
星渉,tomekko,高濱正伸,安浪京子