■「いきなり座学」は、幸せな学びにならない

矢萩:親がどれぐらいかかわるか、という議論の前に、勉強とは何か、ということを捉え直さないといけないと思うんです。4科の勉強を最初から座学でガリガリやらせるのは、おすすめできません。僕は、学びの入り口は何か親子で探究したほうがいい、とよく言っているのですが、それは、学びの入口が「テストのため」だったり、興味のないことを「暗記すること」ことだったりすると、高校や大学くらいになってつまずくことが多いんです。何かひとつ興味を持ったことを親子で観察してみたりして、なんでだろう?と疑問を持ったら、どう調べたらいいんだろう、誰に聞いたらいいんだろう、みたいなことを考えて実際やってみる。この基盤があると、自分で試行錯誤しながらやっていける底力というか、素養ができたりするんです。これが一切ないまま、いきなり自分で勉強をやらせるのも、親が干渉してやらせるのも、目の前のテストでは効果があるように感じるかもしれませんが、長い目で見ると逆効果になりかねない。つまり、基盤がないままだと、放任系でも、過干渉系でも、幸せな学びにはならないと思うんですね。今まで教え子たちを見ていても、順序やバランスは本当に大事だと感じています。

安浪:ただ、今は中学受験の準備もどんどん低学年しているから、基盤を築くときも親は頭の中でそろばん弾きがちですよね。これをやっておいたら算数の力がつくんじゃないか、これは国語の読解力がつくんじゃないか、とか(笑)。全部中学受験の点数にひもづけて考えてしまって、無欲でその基盤作りをできなくなってしまっている親御さんも多いような気がします。

矢萩:そうなんですよね。でも現実的なことを言うとダブルスタンダードでいいと思うんです。これは何か役に立つだろうな、とかこれは読解力に繋がるだろうなって思っていてもいい。いいけれども、それを子どもには言わないとほうがいいですね。例えばゲームをやるときに、このゲームは〇〇力がつくのよ、とか言ってやらせるのではなくて、一緒に遊ぼう、と言って遊ぶ。心の中でのみ、○〇に繋がるかもしれないな、と思っているぐらいがいいと思うんです。親や教師が、目の前のことだけを考えて、「成長や学びのため」と思わないのは不自然ですし、難しいですからね。

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