塾の最大のメリットは「決まった時間に勉強する枠」を作ってくれることです。本人単体でみたときに、果たしてそれが意味ある時間になっているかどうかは別の問題ですが。スケジュール管理を誰がするかも大切です。あとは居場所の確保ですね。ですから、塾辞めではその代わりをどこかに作った方が望ましいです。

 個別塾でも、自習室でもいいので、「出かける場所」や「気持ちを引っ張ってくれる空間」を作ったほうがいいでしょう。その頻度がどれぐらい必要なのかは子どもによっても違ってきます。

――塾に頼れないということは、親も覚悟と労力が必要ですね。

 そうですね。ただ、ここにきて塾に行かないと決めることは、親子ともども成長できるチャンスでもあるんですよ。一番まずいのは、塾に行くのが目的になってしまうこと。やはり私自身は、中学受験の目的は“子どもの成長”にあると思うんです。そこを改めて考え、実行できるチャンスととらえ、「塾にいかない」と決めたなら今までのことはすべてリセットすべきです。他の家庭との比較も無駄です。塾に行くか行かないかより、「あなたがちゃんと育つことが大事」であるという“親として軸”をちゃんと話をしてみてもいいと思います。

――親の心構えで必要のことは?

 完璧な学習を期待しない、ということでしょうね。期待しすぎると出来なかったときに焦るし、焦ってしまうと怒りになる。むしろ、つまずくときはある、やる気が落ちるときもある、と想定し、そのときはどうするか、準備をしておくことが大事です。予定どおり進まない日があっても、できたところを褒め、明日につなげさせる。やった分だけ力になるからと励まし、続けてみよう、と言い続けること。
そして親も一人で抱え込まない、ということです。相談できる人や場所は作っておくことが大事です。

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2018年 秋号 [雑誌]

高濱正伸,安浪京子,tomekko

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AERA編集部
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