みずた・みか/1997年、東京都生まれ。桜美林大学4年生。中学2年生で四肢の先端部分から筋萎縮が進む「シャルコーマリートゥース病」を発症。両足や両手にまひがある。2016年から本格的に射撃を開始。わずか1年後には、車いすの状態で撃つ10mエアライフル伏射SH2で全日本障害者ライフル射撃選手権準優勝。18年W杯(仏シャトールー)は29位(写真/門間新弥)
みずた・みか/1997年、東京都生まれ。桜美林大学4年生。中学2年生で四肢の先端部分から筋萎縮が進む「シャルコーマリートゥース病」を発症。両足や両手にまひがある。2016年から本格的に射撃を開始。わずか1年後には、車いすの状態で撃つ10mエアライフル伏射SH2で全日本障害者ライフル射撃選手権準優勝。18年W杯(仏シャトールー)は29位(写真/門間新弥)

 東京パラリンピックは9月1日、射撃10メートルエアライフル伏射(SH2)があり、水田光夏(24)が出場する。AERA2019年7月29日号のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。

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 10メートル先にある標的。直径30.5ミリの黒い穴が見える。その真ん中。シャープペンシルの芯と同じ直径0.5ミリの「10点」をめがけて、水田光夏は黙々とエアライフルを撃つ。

 ど真ん中なら満点の10.9点。そこから0.25ミリ外れると0.1引かれる。現在の水田のアベレージは10.55。決勝の8人に残るには、アベレージを0.1増やす必要がある。的上0.25ミリの差は、手元では0.01ミリだ。

「とにかく真ん中に向けてまっすぐ撃つだけ。そのためには、体の倒し方とか、何度も試してフォームを探っていきます。最近、ちょっと近づいたかな」(水田)

 わずか0.01ミリの差を埋めるため懸命に練習する。毎回まったく同じフォームだったとしても、「気持ちでずれる」(鳥居健コーチ)のだという。

 かすかな心の揺れが影響するエアライフルは「緊張しない。大きい試合も普段通り」と話す水田に向いているようだ。

 予選は60発を60分以内。1発平均60秒以内に撃たなくてはならない。

「調子が悪かったら、どこがダメか考えるのでちょっと止まります」

 マイペースで悠々と撃つため、時間切れになるのではと周囲をハラハラさせる。

「あとで取り戻せばいい。焦っても仕方ない。それに、60分で撃ち終わらなかったことはありませんから」

 起きたことを受容する現実主義は、病を経て得たものだろう。

「いつも、どうにかなるだろうと思ってやっています」と白い歯を見せた。

 (ライター・島沢優子)

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■パラ射撃

 大きくはライフルとピストルに分かれる。SH1(上肢でライフルを保持して射撃)とSH2(上肢の障害のため支持スタンドを使ってライフルを保持して射撃)の二つのクラスに分かれて競技が行われる。障害の程度によってクラス分けがされる。東京パラリンピックではライフル9種目、ピストル4種目の計13種目が実施される。

※AERA2019年7月29日号に掲載