さとみ・さりな/1998年、千葉県生まれ。NTT都市開発所属。中学時代はバドミントン部。特筆すべき戦績があるわけではないが、運動能力は高かった。高校3年生の5月に交通事故に遭って脊髄損傷を負い、リハビリの一環として父親に連れて行かれたのをきっかけに競技開始。女子のWH1(車いす・体幹が使えないクラス)で世界ランキング6位(4月現在)(写真/写真部・東川哲也)
さとみ・さりな/1998年、千葉県生まれ。NTT都市開発所属。中学時代はバドミントン部。特筆すべき戦績があるわけではないが、運動能力は高かった。高校3年生の5月に交通事故に遭って脊髄損傷を負い、リハビリの一環として父親に連れて行かれたのをきっかけに競技開始。女子のWH1(車いす・体幹が使えないクラス)で世界ランキング6位(4月現在)(写真/写真部・東川哲也)

 東京パラリンピックは9月1日、バドミントンが始まり、女子シングルス(WH1)に里見紗李奈(23)が出場する。AERA2019年5月27日号のインタビューを紹介する(肩書、年齢は当時)。

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 左手小指の付け根にある1センチ大のマメ。こんもり盛りあがった白い塊は、里見紗李奈の負けず嫌いの証しだろう。

 2018年、パラバドミントン国際大会のシングルスとダブルスで2冠。競技歴1年半で世界の頂点に立った。バドミントン経験があり、粘り強いラリーが持ち味だが、車いす歴の短さはハンデだ。

「落下地点は予測できるのですが、チェアワークが難しい。車いすをもっと自由自在に動かせるようになりたい」

 ダッシュしては止まるストップ&ゴーの練習を繰り返す里見の手には、おしゃれなネイルアート。コートで車いすを操るとなれば、その手でタイヤごとガシッとつかむ。摩擦で手袋はすぐに破れる。特に左はボロボロになる。ラケットを持った右より左のほうが、タイヤへじかにパワーを伝えられる。左手一本が、コートでは里見の足になるのだ。

 トランプで負けると勝つまで家族を巻き込むほど勝ち気な性格。半身不随になった当初は引きこもりがちになった。

「車いす姿を見られたくなかった」

 しかし、パラバドミントンを始めると徐々に気にならなくなった。この1月に迎えた成人式で活躍を紹介され拍手を浴びたことで、より自分に自信を持てるようになった。

「将来の夢なんてなくてふわふわした感じで生きてたけど、パラリンピックという目標ができた。事故に遭う前の自分より、今の自分のほうが好きです」

 大切な左手をぎゅっと握りしめた。

(ライター・島沢優子)

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■パラバドミントン

 車いすと立位(腕など上肢の機能に関する障害がある場合)の二つのカテゴリーがあり、その中で障害の種類や程度によってクラス分けされる。車いすのシングルスなどのコートは、一般の半分の面積で行うが、そのほかのルールはほぼ健常者のものと変わらない。タイなどアジアで盛ん。東京大会から正式競技。2019年の国際大会で勝利したポイント数によって出場が決まる。

※AERA2019年5月27日号に掲載