いわぶち・こうよう/1994年、東京都練馬区生まれ。協和キリン所属。先天性で両足首に障害を持ち、左足には装具を付けプレーをする。中学1年時に部活動として卓球を開始する。早稲田大学教育学部では地学を専攻。同大卓球部を経て、2017年に協和キリンへ。現在はプロ卓球選手として活動する。18年世界選手権個人3位。19年のメキシコオープンで個人・団体ともに優勝(写真/写真部・東川哲也)
いわぶち・こうよう/1994年、東京都練馬区生まれ。協和キリン所属。先天性で両足首に障害を持ち、左足には装具を付けプレーをする。中学1年時に部活動として卓球を開始する。早稲田大学教育学部では地学を専攻。同大卓球部を経て、2017年に協和キリンへ。現在はプロ卓球選手として活動する。18年世界選手権個人3位。19年のメキシコオープンで個人・団体ともに優勝(写真/写真部・東川哲也)

 東京パラリンピックは8月24日に開幕した。開会式で入場行進する日本選手団の旗手は男女各1人で、男子は卓球の岩渕幸洋(26)が務める。AERA2020年3月16日号で語っていたインタビューを紹介する(肩書きや年齢は当時)。

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 パラ卓球の岩渕幸洋は2月現在、クラス9(立位)で世界ランキング2位。予選敗退と辛酸をなめたリオから急成長を遂げた背景には、二つの「変化」がある。

 一つめはリオの翌年に実業団の名門・協和キリンへ入部したことだ。パラ卓球選手が健常者のトップチームに所属するのは日本では異例。岩渕は「健常者のトップ選手と打ち合うことで戦術的にレベルアップできた。何手も先を読んでプレーするようになった」と手ごたえを感じる。

 もう一つは、踏ん張りのきかない左足首につける装具を変えたこと。柔らかいプラスチック製から、よくしなる強度の高いカーボン製に。変えた当初は装具に合わせた筋力が必要になるため「脚がパンパンになってきつかった」が、苦労のかいあり、左側に振られるとうまく返せない弱点をカバーできるようになった。

「パラ卓球を初めて見る人は、足に障害のある左側を狙われてかわいそうだという気持ちになるかもしれない。でも、相手の弱点を突くのはスポーツとして当然の戦術。健常者の卓球で、バックが苦手な選手がいればそこをついても当然だと思いますよね? それと同じです。あくまでも競技として見てほしい」

 パラ卓球の面白さを伝えようと「YouTube」への動画投稿も始めた。東京での目標は「金メダル以上」。優勝して、なおかつパラ卓球の面白さを広めたいと願う岩渕は「先入観をとっぱらって、ひとつのスポーツとして楽しんでもらいたい」と力を込めた。

(ライター・島沢優子)

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■パラ卓球

 東京パラリンピックで実施される卓球は、団体戦と個人戦。肢体不自由と知的障害に分かれる。選手は障害の種類や程度、運動機能などによってクラス分けされる(クラス1~5=車いす選手、クラス6~10=立位選手、クラス11=知的障害選手)。健常者のルールとほぼ同じものが適用されるが、一部異なる。

※AERA2020年3月16日号に掲載