都電最後の路線延伸
もう1枚の写真は、昭和通りの和泉橋線から左に分岐して御茶ノ水線へ乗り入れる13系統新宿駅前行きの都電。13系統は1958年4月までは新宿駅前~万世橋で運転されていたが、万世橋~秋葉原駅前(開通後に秋葉原駅東口に改称)を延伸して和泉橋線に接続。運転区間が新宿駅前~水天宮前に変更された。同時期に柳島~福神橋、錦糸堀~錦糸町駅前も延伸されており、都電最後の路線延伸の一つとなった。この時代の秋葉原駅東口界隈は秋葉原貨物駅や秋葉原青果市場が盛業しており、両国や汐留のような貨物駅裏の雰囲気が漂う場所だった。
秋葉原は繁華な街に変わっていた。13系統新宿駅前行きの秋葉原駅東口停留所跡は画面左奥だったが、都電時代の乗降客が疎らな停留所から一転して、JR総武線・山手線・京浜東北線、東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレス線が連絡する一大ジャンクションに変貌している。画面右手には「書泉ブックタワー」があり、神保町店を凌ぐ利用客で賑わっていた。正面向かい側、永島ビル左端の道路先に位置する「せんべい柏屋」に都電時代の憧憬が感じられた。
■撮影:1965年4月16日
諸河久
諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍『路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情』(天夢人)が絶賛発売中。
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諸河久
諸河 久(もろかわ・ひさし)/1947年生まれ。東京都出身。カメラマン。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。「諸河 久フォト・オフィス」を主宰。公益社団法人「日本写真家協会」会員、「桜門鉄遊会」代表幹事。著書に「オリエント・エクスプレス」(保育社)、「都電の消えた街」(大正出版)「モノクロームの東京都電」(イカロス出版)など。「AERA dot.」での連載のなかから筆者が厳選して1冊にまとめた書籍『路面電車がみつめた50年 写真で振り返る東京風情』(天夢人)が絶賛発売中。