森澤恭子(もりさわ・きょうこ)/神奈川県出身。慶應義塾大学卒業。日本テレビ記者、森ビル社員、東京都議会議員などをへて、2022年から品川区長(撮影/植田真紗美)
森澤恭子(もりさわ・きょうこ)/神奈川県出身。慶應義塾大学卒業。日本テレビ記者、森ビル社員、東京都議会議員などをへて、2022年から品川区長(撮影/植田真紗美)

 AERAは今年、創刊35周年を迎えた。1988年の創刊時から、世界は大きく変わった。では、より良い35年後の未来を迎えるために、私たちはどのように生きるべきなのか、どんな社会であることが望ましいのか。品川区長・森澤恭子さんが語る。AERA 2023年5月29日号から。

【グラフ】35年後の日本の気温はどうなる?

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 最近、大学の卒業論文を読み返して驚きました。まさに今、私が取り組んでいる課題が書かれていて。タイトルは「少子化を通して考えるこれからの日本のあり方」。仕事と家庭の両立に必要な政策や女性議員の比率がどう政策に影響するかとか、社会における女性の生きづらさみたいなものが少子化の要因となっているのではないか、という研究をしていたんです。

 私が大学3年生だった2000年は、太田房江さんが大阪府知事に当選した年です。太田さんは日本初の女性知事でした。

 あれから二十余年、今も同じ問題意識で訴え続けています。

 私自身が卒論で書いた課題に実際に直面するのは、少し後になってからです。世の中の最先端を見たいと報道の仕事に就き、記者をしていた20代の頃は、男女の差を感じることはありませんでした。けれど、出産・育児のタイミングで、夫の仕事の都合でシンガポールに行くために仕事を辞め、日本に戻ってきたのは13年。子どもは2歳と0歳でした。仕事を探しましたが、当時は今でいう“柔軟な働き方”はまだ少なく、残業が前提、フルタイムでないと難しかった。再就職したのは、下の子が7カ月になった時です。子どもを保育園に入れるのも大変でした。

 改めて、政策決定や政治の場に女性や子育て世代の声が届いていないから、課題が課題のまま残っているのだと考えました。女性が政治の世界に少ないことも課題だと感じており、であれば自分がやってみようと、16年に政治塾に入り、のちに都議になりました。

 最近、ジェンダーギャップへの意識は少しずつ高まってきたと思います。21年の森喜朗元首相の「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」という発言をきっかけに、女性を含めた多様な視点がまだ少ないという認識が強くなってきたと感じます。今年の統一地方選を経て、23区の女性区長は私を含めて6人になりました。杉並区と武蔵野市の議会は、議員の半数が女性です。

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