統一地方選前半に行われた大阪市長選で、聴衆に手を振る大阪維新の会の横山英幸氏(中央)、松井一郎大阪市長 (左)、吉村洋文大阪府知事(撮影/畠山理仁)
統一地方選前半に行われた大阪市長選で、聴衆に手を振る大阪維新の会の横山英幸氏(中央)、松井一郎大阪市長 (左)、吉村洋文大阪府知事(撮影/畠山理仁)

 今年4月に行われた統一地方選。東京・杉並区議会議員選挙の立候補者69人全員に接触した人がいる。四半世紀近く国内外の選挙の現場を取材するライター・畠山理仁氏だ。なぜ候補者を自分の目で見ることを大切にしているのか。AERA 2023年5月29日号の記事を紹介する。

【写真】大阪ダブル選でも活躍した維新のボランティアスタッフ

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 私が選挙を取材し始めて、もうすぐ四半世紀になる。そんな私が取材で心がけているのは、「できるだけ多くの候補者を自分の目で見る」ことだ。とりわけ国内の選挙では「すべての候補者を自分の目で見ること」を自らに課してきた。そのため、私がこれまでに出会ってきた候補者は2千人を超えている。

 今年4月に行われた統一地方選挙前半戦では、大阪ダブル選(府知事選挙、市長選挙)と奈良県知事選挙の現場を訪ねた。立候補者は、大阪府知事選が6人、大阪市長選挙が5人、奈良県知事選挙が6人。私はすべての候補者を自分の目で見た上で、雑誌、ラジオ、インターネットなどで情報発信を続けてきた。

■維新のボランティア

 今回の統一地方選挙では、日本維新の会の躍進に注目した。奈良県では、大阪府以外で初めてとなる日本維新の会公認の知事が誕生した。その結果、日本維新の会の地方議員と首長は合計で774人に達した。

 維新の強さの理由は「身を切る改革」や「教育費の無償化」など、政策の打ち出しやPRが巧みなこともある。それと同時に、選挙現場を見てきたからわかったこともある。とにかく維新の候補やボランティアは「元気に走り回ってよく動く」のだ。

 一人ひとりが「有権者からどのように見えるのか」を意識しているため、みんなキビキビと動く。700メートル先の演説場所まで複数のスタッフが全力疾走して選挙カーを誘導しているのを見たときは、思わず「よう頑張ってはる」と関西弁でうなってしまった。実際、有権者からもそのような声を何度も聞いた。都市伝説ではなかった。

 ビラを配る際にも維新のボランティアは一味違う。一カ所には固まらない。それぞれが独立した存在として、候補者からどんどん離れて活動範囲を広げていく。遠くからも「あちらに候補者がいます」と案内する。ビラを受け取った有権者を見つけた候補者は、全力で駆け寄って挨拶をしていく。多くの人に主張を広げようと「外に向かって活動している」のがよくわかる。

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