AERA 2023年5月22日号より
AERA 2023年5月22日号より

■2兆円の米国株投信

 まさに「eMAXIS Slim」はブランド化している。金融商品としては珍しい。現状の人気を確かめるべく、金融庁のつみたてNISA対象インデックス型投資信託全192本の純資産総額をすべて調べ、額の大きい順にランキングした。

 トップはやはり「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」で、なんと2兆円の大台を突破。S&P500は米国を代表する500社で構成される指数で、日本でいえば日経225に近い。21年まで米国株の勢いは凄まじかったので、「とりあえずS&P500の投資信託を買っておけばOK」という空気が流れていた。今風にいえば“S&P500しか勝たん”。ところが、ランキングを見ると、この空気に異変がある。

「最近は米国株の人気が落ち着いてきました。ピーク時はインデックス型投資信託全体のうち6割が“米国株もの”だったのですが、全世界株式や先進国株式も売れています。22年以降、米国株が不安定な値動きをしていますので、『本当に米国株に集中投資でいいのか、米国以外に国を分散したほうがいいかも』と考える方が増えているようです」(前山さん、以下同)

 特に全世界株式の追い上げがすごい。全世界株式の一番人気は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」で、今回のつみたてNISAランキングでは2位、純資産総額は1兆円に乗せている。約1年前に本誌がつみたてNISAランキングを集計した際は4位だった(2位と3位は米国株もの)。猛追といえる勢いだ。

「純資産総額でなく、実際のお金の出入りを示す『資金流出入』(21年1月以降)で見ると、よくわかります。つみたてNISA対象の投資信託で『米国株もの』『それ以外の外国株式もの』を比べると、米国株ものの人気のピークは21年12月、1712億円の流入。このとき外国株式ものは957億円でした。今年3月は米国株ものが1336億円の流入、外国株式ものは1324億円。ほぼ同じ金額です」

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