坂本花織/合計224.61点で女子連覇を果たした。SPは1位の79.24点、フリーは2位の145.37点
坂本花織/合計224.61点で女子連覇を果たした。SPは1位の79.24点、フリーは2位の145.37点

 3月22~26日にさいまたスーパーアリーナで開かれた世界フィギュアスケート選手権。坂本花織が日本女子初の連覇を果たした。ペアは三浦璃来、木原龍一組が日本勢初優勝を飾った。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

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 日本女子初の連覇を達成したのは、坂本花織(22)だ。

 坂本にとって、さいたまスーパーアリーナは悔しさの残る会場でもある。4年前の世界選手権ではSPで2位につけながらも、フリーではフリップが1回転になる痛恨のミス。総合5位に終わった。

「(良い成績で悪い記憶を)上書き保存できたら」

 そう語って臨んだ今大会のフリーだった。だが、またしてもフリップが1回転に。

「同じミスをしてしまって、悔しい」

 演技後は涙が止まらなかった。ただ、4年間の進化が演技には確かに詰まっていた。1回転フリップの後、あきらめずに3回転トーループを付けて連続ジャンプにしたことだ。

「そこは4年前からの成長かな」

三浦璃来、木原龍一組/合計222.16点でペア初優勝を飾った。SPは1位の80.72点、フリーは2位の141.44点
三浦璃来、木原龍一組/合計222.16点でペア初優勝を飾った。SPは1位の80.72点、フリーは2位の141.44点

 日本勢初のペア金メダルに輝いたのは、「りくりゅう」こと三浦璃来(21)、木原龍一(30)。フリーのスローループで転倒し、表情が抜け落ちた演技後の三浦に、木原はこんな言葉をかけたという。

「観客席を見てごらん。これだけたくさんの人がたたえているのだから。胸を張ろう」

 自己ベストを更新する総合222.16点。得点を確認すると、2人は固く抱き合った。

 GPファイナル、四大陸選手権に続く優勝で、同一シーズンに主要国際大会を全て制す「年間グランドスラム」達成。日本ではシングルに比べ、ペアの選手層は薄い。だからこそ、木原は語った。

「次世代の子たちがペアに挑戦しようというきっかけになったら、10年後、20年後に(この結果は)大きな意味が出てくるんじゃないかな」

村元哉中、高橋大輔組/アイスダンス11位で合計188.87点。リズムダンスは11位の72.92点、フリーは10位の115.95点
村元哉中、高橋大輔組/アイスダンス11位で合計188.87点。リズムダンスは11位の72.92点、フリーは10位の115.95点

■集大成の大会で完成形

 アイスダンスに挑んだ村元哉中(むらもとかな・30)、高橋大輔(37)組は、フリー「オペラ座の怪人」を滑りきると、涙をうかべて互いをたたえ合った。

「オペラ座」は高橋がシングル時代に演じた曲。2007年の世界選手権で日本男子初の銀メダルを獲得した思い出深いプログラムの“再演”だ。ただ、昨年末の全日本選手権や今年2月の四大陸選手権では転倒するなど、「アイスダンス版」はなかなか納得する演技ができなかった。

 今季集大成の大会で、ついに完成形を披露。

「ミスなく演技をすることができたし、最後まで『オペラ座』の世界観に入り込んだ。自国開催でプレッシャーも大きかったんですけど、満足いく演技ができた」

 達成感を語る高橋に、村元も応じる。

「奇跡ではないと思う。自信をもって練習したと思っているので、その成果ではないかなと思います」

(朝日新聞スポーツ部・藤野隆晃)

AERA 2023年4月10日号より抜粋