2023年度から性別問わず選択式になった宮崎県日南市の公立中学校の制服。左から2種類のスラックス、キュロット、スカート
2023年度から性別問わず選択式になった宮崎県日南市の公立中学校の制服。左から2種類のスラックス、キュロット、スカート

 ジェンダー平等や多様性に配慮した制服を導入する取り組みが進んでいる。スラックスとスカートだけでなく、第三の選択として「キュロットスカート」の導入など、制服の選択肢が広がっている。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

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「男子は詰め襟、女子はセーラー服」が定番だった学校制服の見直しが、全国で進んでいる。詰め襟・セーラー服に代わってブレザーを採用する学校が増えているほか、性の多様性や着心地に配慮し、選択肢を増やす取り組みも盛んだ。

キュロットタイプの制服。多様な性に対応するだけでなく、自転車の運転がしやすい、下着が見えにくいなどの利点もあるという
キュロットタイプの制服。多様な性に対応するだけでなく、自転車の運転がしやすい、下着が見えにくいなどの利点もあるという

 兵庫県立山崎高校では、2023年度から裾が分割されたスカート「キュロットスカート」の制服を導入する。従来からあるスラックスとスカートも含めて、男女関係なく自由に選択できるという。

 同校では、20年から制服の選択肢を広げる取り組みを進めてきた。きっかけは当時1年生だったひとりの女子生徒の声。10月のある日、「スカートとリボンで学校生活を送るのがもうしんどい」と、養護教諭に泣きながら相談があったという。

「養護教諭から何とか彼女が学生生活を送れるようにしたいと話があり、年度途中でしたがスラックスの導入を進めようと議論をスタートさせました。翌年1月から女子タイプのスラックスを導入し、きっかけとなった女子生徒もこの春無事に卒業しました」(上杉祝久生徒指導部長)

 そして去年、戸籍上の性別を変更し男性として生活している人の講演会を行ったところ、生徒から講演者への質問に「自分の性自認がまだわからず、スカート、スラックス両方に違和感がある」「スカートではなくスラックスを着用したいが、周囲に自分の性に関する悩みをカミングアウトしてしまうようで怖い」という声があったという。業者も交えて検討を進め、生徒へのアンケートでも7割弱が導入に賛成したことからキュロットの追加導入を決めた。

「多様な性に対応する観点以外に、キュロットは自転車の運転がしやすく、下着が見えにくいので座りやすいという『着やすさ』への配慮もあります」(同)

AERA 2023年4月10日号より
AERA 2023年4月10日号より

 男性用と女性用でボタンが逆になっていたブレザーも、個人で自由にボタンを付け替えられるタイプに変更する。性別関係なく制服を選べるようにする「ハード面」の整備を足掛かりに、生き方や多様な性を尊重し、生徒それぞれが個性を発揮できるようにしたいという。(編集部・川口穣)

AERA 2023年4月10日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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