指名打者として先発出場した大谷翔平は九回に登板し、優勝を決めた瞬間に雄たけびをあげる(AP/アフロ)
指名打者として先発出場した大谷翔平は九回に登板し、優勝を決めた瞬間に雄たけびをあげる(AP/アフロ)

 14年ぶり3度目の世界一の感動が冷めやらない。野球の日本代表(侍ジャパン)が頂点を極めたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を振り返る。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

【写真】もう一度みたい!大谷翔平のホームランはこちら

*  *  *

 3月22日のWBC決勝・侍ジャパン−米国戦。大谷翔平(28)がエンゼルスの同僚で米国の主将、マイク・トラウト(31)を空振り三振に仕留めて優勝を決め、帽子やグラブを投げて喜びをあらわにする姿はあまりにもドラマチックだった。

 今回の侍ジャパンは「本気度」がひしひしと伝わる陣容だった。大谷、ダルビッシュ有(パドレス、36)、鈴木誠也(カブス、28)、ラーズ・ヌートバー(カージナルス、25)、吉田正尚(レッドソックス、29)と大リーグから5人が参加。鈴木は大会前に左わき腹を痛めて出場辞退となったが、ダルビッシュは大リーグ組で唯一、宮崎での強化合宿初日から参加。吉田も自身の強い希望で、大リーグ挑戦初年度で異例の大会出場となった。

14年ぶりの優勝を喜ぶ選手たち。故障で出場辞退した鈴木誠也や途中離脱した栗林良吏のユニホームも掲げられた(AP/アフロ)
14年ぶりの優勝を喜ぶ選手たち。故障で出場辞退した鈴木誠也や途中離脱した栗林良吏のユニホームも掲げられた(AP/アフロ)

■大リーガーが続々参加

 WBCの認知度が上がり、他国の大リーガーも積極的に出場の意思を示すようになった。前回17年大会で初優勝した米国はア・リーグ最優秀選手(MVP)3度のトラウトが参加の意向を表明すると、ポール・ゴールドシュミット(カージナルス、35)、ノーラン・アレナド(カージナルス、31)、トレイ・ターナー(フィリーズ、29)ら強打者が続々と参加。ベネズエラ、ドミニカ共和国、プエルトリコなど強豪国にも大リーグを代表する選手が集まった。

 ただ、侍ジャパンのように他国が「史上最強のチーム」を結成したかというとそうではない。首脳陣が頭を悩ませたのが投手陣だった。各球団のエース級の投手たちが故障のリスクを懸念して不参加に。サイ・ヤング賞(最優秀投手賞)3度のクレイトン・カーショー(ドジャース、35)は出場に意欲的だったが、2月に辞退を発表。過去の故障歴から保険会社から出場を許可されなかった。大リーグの中でも、WBC出場に協力的な球団と消極的な球団に分かれて大会に対する温度差があった。

 大リーグ関係者はこう話す。

「選手がWBCに出場したいという意思だけで出られる世界ではない。大谷もエンゼルスが『投打の二刀流』での出場に理解を示したから、輝けたことを忘れてはいけない。ダルビッシュも大リーグで実績を積み上げたから、パドレスが本人の希望を尊重して侍ジャパンの合宿初日から参加できた」

次のページ