エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】Colabo代表の仁藤夢乃さん

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 10代の頃、あなたが安全に寝起きできる場所はどこでしたか。そんなの自宅に決まっているじゃないかと怪訝(けげん)に思う人も多いでしょう。でも、そうではない子どもがたくさんいます。暴力を振るわれたり、性的虐待を受けたり、ネグレクトされているなどさまざまな理由で自宅が安全ではない子どもたちは、街に出るほかありません。ネットや路上にはそうした行き場のない子どもたち、中でも少女たちを狙って性搾取を行う大人が大勢います。

 こうした10代の少女たちを性搾取被害から守るための支援活動をしている一般社団法人のColaboは、国や都から委託を受けてバスカフェという取り組みを続けてきました。バスを改装した10代女性向けの無料カフェを、新宿や渋谷で定期的に開催。一晩に50人ほどの少女が利用することも。居場所のない少女たちが困りごとを相談したり、食事を摂ったり、生活物資を受け取ったり、信頼できる大人を通じて適切な支援とつながれる貴重な場所です。私も寄付と物品支援を続けています。

Colabo代表の仁藤夢乃さんは3月14日に会見し、「行政は妨害に屈するのではなく守ってほしい」と訴えた
Colabo代表の仁藤夢乃さんは3月14日に会見し、「行政は妨害に屈するのではなく守ってほしい」と訴えた

 その活動が今、攻撃を受けています。ネットでの誹謗中傷、不正会計のデマの流布(住民監査と都による再調査で不正会計は認定されず、委託金を出した都にも損害がないことが判明済み)、バスカフェの現場で妨害行為を行う(中心人物の男性に対し東京地裁が接近禁止の仮処分を決定)など、Colaboの活動に対する執拗で悪質な攻撃が続いているのです。こうした状況で、都は開催に危険が伴うとしてColaboに対し次回のバスカフェ開催を中止するよう要請しました。これでは、嫌がらせには効果があるという前例を作ってしまいます。Change.orgではバスカフェ継続を求める署名が立ち上がり、私も賛同しました。都や区は、少女たちを性搾取被害から守るために積極的に支援活動を進めてほしいです。

◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。

AERA 2023年4月3日号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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