SNSの普及で人々の承認欲求が高まったと感じる人は多い(撮影/小黒冴夏)
SNSの普及で人々の承認欲求が高まったと感じる人は多い(撮影/小黒冴夏)

 回転ずしチェーンなどで相次ぐ「客テロ」。迷惑行為をした男性客の個人情報を拡散する動きも出ている。SNSの「承認欲求」にそそられる心理を考えた。AERA 2023年3月20日号より紹介する。

【図】承認欲求が高まったと感じる理由はこちら

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 回転ずしチェーンなどでの迷惑行為をSNSに投稿する「客テロ」が社会問題化している。飲食やコンビニ業界ではかつて、自社のアルバイトが不適切な行為を動画に撮り、SNSに投稿する「バイトテロ」も相次いだ。これらは、身近な友人に「面白いと思われたい」感情が背景にあると指摘されている。

 一方、迷惑行為をした側の氏名や通学先とされる個人情報を拡散する動きもSNS上で過熱している。

 露悪的な投稿も「正義感」に基づく投稿も、共通するのは「承認欲求」だ。本誌のネットアンケートで「SNSの普及で自分や周囲の人たちの承認欲求が高まったと感じますか」と質問したところ、大半が「そう思う」と回答した。

 都内のサービス業役員の50代女性もその一人。女性は「SNSに踊らされている人があまりにも多い」と嘆く。ここ数年、友人や部下から聞く「もめごと」の多くがSNS絡みだという。

「SNSがなかった時代には起こり得なかった人間関係の亀裂やストレスが周囲で繰り返されています。その裏には承認欲求や、自分を良く思ってもらいたいという意識の強さがあると感じます」

 女性の周囲で最近おきた事例を一つ挙げてもらった。

 仕事終わりの社内のエレベーター。居合わせた40代の後輩女性が思いつめた表情で語り始めた。

「じつは、こんなことがあったんです」

■「幸せ自慢?」

 この独身女性は数カ月前に新居を購入した。その後、彼氏ができた。誕生日に自宅でそろいのパーティーハットをかぶってケーキを囲み、キャンドルを眺めているツーショット写真をインスタグラムにアップした。これに反応したのが、離婚してアパートに転居したばかりの同僚女性だった。

「何あれ、幸せ自慢? 私も頑張らないとね」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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