2018年に撮影したスシローの店内を回るすし。一連の事件を受けて、レーンに流すすしは当面の間、客が注文したものに限られる
2018年に撮影したスシローの店内を回るすし。一連の事件を受けて、レーンに流すすしは当面の間、客が注文したものに限られる

 回転ずしチェーン「スシロー」での迷惑動画が発端となり、世間を騒がせた「客テロ」。どうして迷惑行為をしたのか。世間はなぜ厳しくたたいたのか。識者の意見を聞いた。AERA 2023年3月6日号の記事を紹介する。

【写真】くら寿司のレーン上部に設置されているAIカメラ

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 その動画は多くの人に不快感を与えた。回転ずしチェーンでしょうゆのボトルをなめたり、指に唾液(だえき)をつけてレーンを流れるすしに塗りつけたり──。スシローで行われた迷惑行為だ。

 これが発端となり、類似の動画が次々と現れた。うどん店で天かす用の共用スプーンを口に入れる、牛丼チェーン店の紅生姜(べにしょうが)を直箸(じかばし)で食べる、カラオケ店のドリンクバーの機械から直接飲む、などだ。かつて撮影された動画が発掘され、拡散された。

■AIカメラを全店舗に

 スシローの運営会社は迷惑行為をした少年と保護者から謝罪を受けたが、「刑事、民事の両面から厳正に対処する」と表明。被害届の提出を受けた岐阜県警は少年と撮影者ら数人を偽計業務妨害の疑いで書類送検する方針だと報じられた。一方で、自身も飲食店を経営する飲食専門弁護士の石崎冬貴さんは、

「未成年のため家庭裁判所に送致され少年審判を受けることになります」

 と説明した上で、こう話す。

「事件の影響力は大きいが、やったことだけ見れば凶悪事件でもなく、保護観察すら必要ないと判断されるかもしれない」

くら寿司のレーン上部に設置されているAIカメラ(写真:くら寿司提供)
くら寿司のレーン上部に設置されているAIカメラ(写真:くら寿司提供)

 スシローの持ち株会社の時価総額が一時170億円近く下がったことも話題になった。だが、売り上げや株価の低下について損害賠償を請求できるかというと、

「飲食店の売り上げはそもそも日によって違いますし、事件と売り上げ低下の因果関係を証明するのはまず不可能でしょう。株価はそもそも株主の損害であり、会社の損害ではありません」(石崎さん)

 では、どうしたら「客テロ」と言われる迷惑行為を止めることができるのか。過去には飲食店やコンビニエンスストアで「バイトテロ」なども繰り返されてきた。

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