働く女性が増える中、死産や流産後の仕事復帰に悩む人も少なくない。職場の理解が進まず、死産にも適用されるはずの産休さえ取れないケースもある。AERA2023年2月20日号の記事を紹介する。
【「よかれと思って」が傷つけてしまうことも】赤ちゃんを亡くした親たちが傷ついた言葉はこちら
* * *
妊娠できるのはあたりまえじゃないとは思っていた。でも、妊娠後にこんなにも試練があるとは思ってもいなかった。
東京都内の会社員、星野よしみさん(37)は最初の妊娠で初期流産。その後、双子の一人を死産した。3度目の妊娠では、赤ちゃんがおなかの外で生きられないとわかり、妊娠15週で人工死産することになった。
繁忙期に急に休むことに同僚たちへの申し訳なさが募った。産後は1カ月健診で母体の回復に問題がなければ復帰するつもりだった。だが、調べたところ、労働基準法では妊娠12週以降であれば、死産も流産も出産と同じように8週間の産後休業の対象であることがわかった。
「会社の規約などには流死産の情報は欄外に小さな字で書かれているだけ。死産後で心身が傷ついた状態で自分で必死に調べ、事情を話して相談しなければならないのはとても大変でした」
■死産の産休は突発的に
多くの人は妊娠さえすれば元気な赤ちゃんが生まれると信じている。だが、おなかの中の赤ちゃんが亡くなることは珍しいことではない。2021年人口動態統計によると、妊娠12週以降の「死産」は1万6277件。50人に1人以上が死産という割合だ。また日本産科婦人科学会は赤ちゃんがお母さんのおなかの外では生きていけない妊娠22週より前に妊娠が終わることを「流産」と定義しているが、その割合は約15%。妊娠した女性のおよそ6人に1人は流産や死産を経験している計算だ。近年、結婚や妊娠後も働き続ける女性が増える中、死産や流産後の職場復帰で悩む人も少なくない。
星野さんは、産後休業を取り、産後2カ月で仕事復帰したが、焦りを感じたという。
「事前の準備をしてから休みに入る通常の産休と違って、死産の産休は突発的なことがほとんど。私の場合は、ちょうど繁忙期に仕事の穴を開けてしまったこともあって、キャリアの先行きも心配でした」(星野さん)
「いつかこの経験が人生の糧になる」といった励ましも、かえってつらかった。復職後しばらくは、人とコミュニケーションすることが苦手になり、昼はお弁当を持参して、ひとり自席で食べることが多くなった。