ソニーグループが営業利益1兆2023億円(2022年3月期決算)をたたき出した。営業利益1兆円超えは国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ2社目だ。家電の不振から復活した原動力は、そこで働く「ソニーな人たち」だ。
【写真】工場を視察するソニーの盛田昭夫社長(1972年撮影)
短期集中連載の第5回は、ソニー人事総務部門副部門長の栗田麻子さん(46)だ。人生の転機にどう向き合うか。会社にできることは何か。ソニーらしい人事によるキャリアを、自ら積み上げてきた人事担当者だ。2022年12月19日号の記事を紹介する。(前後編の前編)
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2002年にソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズに入社。海外赴任を経験したいという希望をもっていた。03年に結婚した際には、大手商社に勤務する夫に「いずれ海外にいく時には、単身赴任するからね」と、あらかじめ断っていたほどだ。
06年、念願かなってスウェーデンのソニー・エリクソンに赴任が決まる。夫も単身扱いになったことで、ほぼ同じタイミングで米ニューヨークにトレーニーとしての赴任が決まった。スウェーデンと米国という遠距離夫婦生活である。
29歳でのスウェーデンでの勤務経験は、栗田麻子(46)の「女性の働き方」に対する目を開かせた。一般社員はもちろん、マネジメントも子育てをしながら共働きをしている女性ばかりだった。日本はいまだに女性管理職が3割を超える企業は10%に満たないが、スウェーデンは世界でももっとも女性の社会進出が進んでいる国の一つだ。その環境が、栗田にとってのスタンダードになった。
■出産後に「本社復帰」
栗田は2年で帰国した。次のライフイベントは出産だった。09年、男の子を授かる。当時は、今以上に保育園不足が深刻だった。栗田は、比較的入園しやすい0歳児のうちに子どもを保育園に預け、7カ月で復職する。その際、ソニー・エリクソンではなくソニー本社の人事部に復帰した。通常、育休後の復帰は慣れた職場で、無理をさせないように計らうが、栗田の場合は違った。本社勤務を経験したほうがいいという上司の判断もあり、本人の希望もあって転籍したのだ。不要な計らいや、産休・育休明けの女性が責任の軽い仕事の担当になったり昇進コースから外れるようなマミートラックとは無縁である。