東京地検に告発状を提出した後、会見をする赤木雅子さん=編集部・野村昌二撮影
東京地検に告発状を提出した後、会見をする赤木雅子さん=編集部・野村昌二撮影

「告発ということができると聞いた時に、まだこの手があったんだと、涙が出ました」

 9月16日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ。赤木雅子さん(51)は、こう喜びを語った。雅子さんの夫で、近畿財務局職員だった赤木俊夫さんは、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざん問題をめぐり、それを苦に2018年3月に自死した。改ざんを指示したのが、当時の財務省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)氏だった。

 この日、雅子さんらは、森友学園の公文書改ざん問題で、ウソの理由で不開示を決定したなどとして、佐川氏ら3人を東京地検特捜部に刑事告発した。

 告発状などによると、2017年3月から5月の間、第三者の市民が財務省に対し、森友学園の理事長と財務省職員との面会記録や森友学園の国有地売却に関する交渉や協議などの内容を記録した行政文書の開示を求めたが、不開示となった。

 しかし、文書は存在していた。佐川氏らがこれら文書の存在を知りながら、わざと「文書の保有が確認できなかった」というウソの理由で、不開示を決定した。これらの行為が「有印虚偽公文書作成罪」と「同行使罪」に当たるとして刑事告発した。

 雅子さんらと一緒に会見にした、告発人の一人で、この問題を国会で取り上げていた元衆議院議員の川内博史氏は、

「真実を明らかにし、責任を取るべき人が責任を取ることによってしか、世の中の正義、あるいは民主主義は前進できない」

 と告発に至る経緯を語った。

 雅子さんは2020年3月、国と佐川氏を提訴したが、国は昨年12月、雅子さん側の請求を認める「認諾」をし、関係者の証人尋問などは行われないことになった。佐川氏への訴訟だけが残っていて、判決は11月25日に出るが、裁判では佐川氏は一度も法廷に出席しなかった。

 今回の告発が東京地検に受理されれば刑事裁判になる。

 雅子さんは、事件の真実に一番近いところにいられるという思いで、告発人に名を連ねることにしたという。それだけに、告発にかける思いは強い。

 川内氏から告発できると聞いた時、涙が出て、帰宅すると、俊夫さんの遺影に「まだ手があった」と報告したという。

 雅子さんはこう言った。

「とにかく真実が知りたい。夫がなぜ死ななきゃいけなかったのか、佐川さんらに本当のことを話してもらいたい、ただそれだけです」

(編集部・野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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