スーツは紺、シャツも決まったメーカーと決めている。市政以外のことに時間も思考も取られるのは嫌なので、服装も昼食のメニューもいつも同じ(写真=楠本涼)
スーツは紺、シャツも決まったメーカーと決めている。市政以外のことに時間も思考も取られるのは嫌なので、服装も昼食のメニューもいつも同じ(写真=楠本涼)

 前出の小室が経営するワーク・ライフバランスは、市役所の働き方改革のコンサルに入っている。当時は会議の仕方や意思決定の仕組みも含めて改革を進める東のスピード感とパワーに対して、職員のアレルギーが強く、「過去にないほど大変な案件だった」(小室)。

「それでも1期目で子育て世代の転入が増えるなど、変化が数字として表れるまでになるには、働き方から職員の心まで変化しないと無理なんです。四條畷の事例はその後多くの自治体から注目されています」

 東の公式サイトにはこれまで取り組んだことと、市に起きた変化が掲載されている。力を入れたのは子育て世代に選ばれること、悪化していた市の財政状況を改善させること。人口減時代に持続可能な行政運営をしていくために限りある財源をどう配分し直すのか。どの自治体にも共通する課題だ。

 東が書棚から折に触れ開くのは、マックス・ヴェーバーの『職業としての政治』だ。この中でヴェーバーは、政治の本質は権力であり、「政治とは権力の分け前にあずかり、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力だ」と定義づけている。

 財政再建の一環として東は、市民団体への補助金や利用率が低迷する施設を見直し、関係者からは大きな反発を受けた。人事課長に抜擢された安田美有希はその後、生涯学習推進課長としてこの問題の矢面に立った。精神的につらく、一時は退職まで考えたという。だが、東はこう言い切る。

「使われていない施設の維持にお金がかかり財政が硬直化した結果、福祉や子育てサービスや施設にお金が回らない。私が常に考えているのは、5万6千人の市民が50年後100年後に必要なものは何かということ。私たちが語るべき言葉は、市長や市役所がどうしたいかでなく、市民の皆さんにどうなっていただきたいかなんだと思います」

■完全無所属だから制約なし 徹底した公平を貫く

 東は1回目の選挙から政党、団体からの推薦・支援は一切受けていない。1期目の実績を評価した政党や団体から、2期目の出馬の際、推薦の申し出もあったが断っている。完全無所属だからこそ議会とは常に緊張関係にある一方で、一切のしがらみや制約もなく、「二元代表制を完結できている」(東)という。

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