「孤独は現代の公衆衛生上、最も大きな課題の一つ」として英国は2018年、世界初の孤独担当大臣を任命。日本は21年にそれに続いた。日本の問題点はどこにあり、どう対策すべきなのか。英国の孤独対策に詳しく『孤独は社会問題』(光文社新書)を出版したジャーナリストの多賀幹子さんが、現在の担当大臣の野田聖子さんに聞いた。「孤独」特集のAERA 2022年3月7日号の記事から紹介する。
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──日本では五木寛之さんの『孤独のすすめ』や上野千鶴子さんの『在宅ひとり死のススメ』がベストセラーになるなど、孤独を肯定する声も強いです。
孤独・孤立対策の何が難しいって、立ち位置によっては孤独を崇高に捉える人や、武士の魂みたいでかっこいいというトレンドがあることです。私、武士じゃなくて女子なんで(笑)、そういう空気を変えていきたいと思います。
──「武士は食わねど高楊枝(ようじ)」ということわざがありますが、どんなに貧しくてもつらいと言わずに耐えることを美化するような風潮がありますもんね。
大臣になって、大勢の孤独・孤立や自殺対策に取り組む精神科医やNPOの人にお目にかかって、目からうろこだったのが、問題が一番深刻なのは中高年の男性たちだということです。相談窓口もない、と。私は女性や子どもたちの政策に取り組んできて、男性はどうにかなると思っていたのですが、逆だと教えてもらいました。
男性は長年働いて、定年になった途端に会社から放り出される。朝出かけて夜帰ってきていたから近所のどこに誰がいるかもわからない。プライドもあってつらいと言えず、いろんな連鎖を引き起こしてしまう。
──英国には中高年男性の孤独対策でメンズ・シェッドが効果を上げています。公園のベンチをつくるなど手を動かしながら仲間をつくっています。
何かを与えられるのではなくて、自分が誰かの役に立っているという仕組みにしないと。