元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】稲垣さんが台南旅行中にピアノの練習をした小部屋

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 昨年末、ある仕事でコロナの話題になり、一体いつになったら海外旅行とか行けるんスかネと尋ねる人あり、専門家的な人が来年あたりは何とか……などと答えているのをぼんやり聞いていたんだが、今やそんなやりとりが前世くらいの遠い出来事のよう。

 個人的には、もうそんな時は来ないと考えた方がいい気もしている。実を言えば、50歳で会社を辞めた理由の一つが、ずっと我慢していた海外旅行がしたいってことだったので、いざとなったらコレかいとまあまあの衝撃。でもワクチンを確保し国内の感染を必死に抑えたところで、どこかの国で新種が出ればアッという間に元の木阿弥(もくあみ)という現実を見れば、先方がグローバル化と格差という人類の弱点を正確に突いてくることに感服するしかない。無論先方にそのような意志はなく、我らの独り相撲なわけだが。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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