佐藤亮子さん(右)と柳沢幸雄さん(撮影/門間新弥)
佐藤亮子さん(右)と柳沢幸雄さん(撮影/門間新弥)

 理数系に苦手意識を持つ人は多い。原因がわかれば、大人でもやり直せる。3男1女が東大理IIIに合格した“佐藤ママ”こと佐藤亮子さんと開成中学・高校前校長の柳沢幸雄さん。教育界のカリスマ2人が語り合った。AERA 2022年1月24日号は「理系を育てる」特集。

【図版】佐藤ママ&開成前校長が伝授!「算数・数学を好きになる5か条」はこちら

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 3男1女が最難関の東京大学理科・類に合格した“佐藤ママ”こと佐藤亮子さんと、東大合格者ランキング40年連続1位の開成中学・高校で校長を務めた経験がある柳沢幸雄さん(現在は北鎌倉女子学園中学・高校の学園長)の対談は、算数・数学の力を伸ばす方法をめぐって熱を帯びていった。

──算数・数学や理科に苦手意識を持つ子どもは多いと感じますか?

柳沢:開成高校の場合は全体の約7割の生徒が理系です。残りの3割の文系のうち「数学が苦手」などの消極的な理由によって文系を選択した生徒が半分くらいだと思います。ただ、おそらく一般的には全然違う割合でしょうね。数学が嫌いだから文系を選ぶ生徒はもっと多いはず。

佐藤:そういう印象はありますね。うちの子ども(男子3人)が通っていた灘高校も4分の3は理系なんですが、それは灘の中学入試の算数と理科が難しいので理系が得意な子が集まってくるから。実際、私の講演会にいらっしゃるお母さん方から直接話を聞くと、「子どもの数学嫌いをどうにかしたい」という声はすごく多いです。

──2019年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)を見ても、理系嫌いが日本の子どもたちの中に根強くあるようです。算数・数学の「勉強は楽しい」「得意だ」と答えた子どもの割合は国際平均を下回っています。

柳沢:教える立場からすると、苦手意識を持たせないようにするのが一番重要です。例えば今は小学校で英語を教えますけど、そこで最も気をつけるべきは英語嫌いを作らないこと。

(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

■分数は原則を教える

佐藤:でも算数・数学の難しいところは、本当に積み重ねじゃないですか。どこかでつまずくと一気に崩れてしまう。足し算ができなかったら引き算もできないし、九九が苦手だとその後ずっとバタバタしてしまいます。

柳沢:風邪で1週間休んだだけで途端にちんぷんかんぷんになったりね。

佐藤:ちゃんと順を追ってやらないとダメで、九九が苦手なまま小5まできてしまった子に「小数の割り算をやりなさい」と言ってもできないんです。

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