立憲民主党の代表選で、討論会を終えてグータッチする(左から)泉健太、小川淳也、逢坂誠二、西村智奈美各衆院議員。泉氏が新代表に選出された/11月25日、横浜市
立憲民主党の代表選で、討論会を終えてグータッチする(左から)泉健太、小川淳也、逢坂誠二、西村智奈美各衆院議員。泉氏が新代表に選出された/11月25日、横浜市

 泉健太氏が新代表に決まった立憲民主党の代表選だが、党内では泉氏と小川淳也氏が決戦投票にもつれ込み、小川氏が1位を奪還する噂も流れていたという。AERA 2021年12月13日号は、番狂わせが生じた舞台裏に迫った。

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 今回の立憲民主党代表選、誰が勝ってもおかしくない、いわば「本命なし」の選挙だった。党内最大派閥「サンクチュアリ」の推薦を取り付けた逢坂誠二氏(62)。唯一の女性候補者として、党内から期待された西村智奈美氏(54)。地元である香川1区で、自民党の前デジタル相を選挙区で破り、その実力を内外に印象づけた小川淳也氏(50)。そして、代表選への立候補は2回目で、全候補者の中で最も若く、枝野体制の下で政調会長として党の政策を束ねた泉健太氏(47)。キーワードは「脱枝野」「ベテラン」「女性」「次世代」。そんな中、代表選終盤で国会議員票を中心に一歩抜け出たのが泉氏だった。

 その一方、4人が出馬したことで、1回目の投票で誰か一人が過半数を獲得することはない。つまり、決選投票にもつれ込むことが想定されていた。その際、最初の投票で泉氏がトップに立った場合、2位が誰になったとしても、泉氏以外の3候補が協力して1位を奪還するという協議が水面下で進められていた。

■投票まで数時間で登場

 2位は誰なのか。はっきりしないまま投票日前日を迎えた。その晩、決選投票は「泉と小川」という噂が流れる。旧執行部に名を連ねていた立憲ベテラン議員はこう予測した。

「泉か小川か、となれば枝野執行部に近い旧立憲のメンバーは元国民の泉には投票しにくい。小川であれば旧執行部との距離も近くはないが、遠すぎることもない。経験という意味でも我々の意向を反映することもできる。それで決まりかな」

 つまり、「泉と小川」の場合、決選投票では旧立憲票が一気に小川氏に流れ、泉氏は先行していたとしても不利だというのだ。それを証明するかのように、投票まであと数時間、小川陣営の総決起集会にあの人物が姿を現す。参議院議員の蓮舫氏だった。実はこの代表選当初、推薦人集めに苦慮した小川氏の背中を押し、「淳也を出さないと立憲はまずいよ」と裏で動いたのが蓮舫氏だった。枝野幸男前代表を支えきれなかった旧執行部のメンバーが、ポスト枝野を決める代表選で、実際に名前を挙げて個別の候補者を応援するのは例のないことだった。

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