キレてしまう人がいる一方で、キレたくてもキレることができない人、泣きたいのに泣けない人もいる。どちらも心の中では同じことが起きているという(illustration 田房永子/AERA 2021年10月11日号より)
キレてしまう人がいる一方で、キレたくてもキレることができない人、泣きたいのに泣けない人もいる。どちらも心の中では同じことが起きているという(illustration 田房永子/AERA 2021年10月11日号より)

 コロナ禍で加速するストレスフルな毎日。自分の怒りをコントロールするにはどうしたらいいのか。AERA 2021年10月11日号では、この分野の第一人者で公認心理師の岡田法悦さんと、怒りに悩んできた漫画家の田房永子さんが対談した。

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田房永子(以下、田房):もともと母親や元カレからはキレやすい性格だと言われていて「私はそういう人なんだ」ってずっと悩んでいました。特に第1子を出産した後の1年くらいは荒れていたんです。例えば、夫が帰ってきて「部屋が散らかってるよ」とかそういう一言だけで、「うわあああ」みたいな。一番味方になってほしい人にそういうことを言われるっていう絶望感もある。私の場合は、執着している相手にキレていたんですね。

■水風船がボーンと爆発

岡田法悦(以下、岡田):本書の中でも田房さんに漫画を描いていただきましたけど、感情っていうのは自分の心という袋の中に入っています。その袋の口をぎゅっとしばっているとその感情は溢れ出ませんが、身近な人と一緒にいるときとか、お酒を飲んだときとかに、ちょっとしたきっかけでその紐がゆるんじゃうんです。そうすると何かのきっかけで、袋の中に詰まっている水風船に針がささってボーンと爆発してしまうんですよね。

田房:夫からも、子どもにも同じようにキレるんですかと言われて。その時に本当にどうにかしないといけないと思ったんです。精神科にも行きましたが、女の人が男の人にキレるってよくあるみたいな感じで終わってしまい、問題視されませんでした。旦那さんが殴る場合だと、DVなどのプログラムもいっぱいあるのに、女がキレちゃうという話はザルにも引っかからない。困り果てて図書館で何十冊もの心理療法の本を借りて読んだところ、ゲシュタルト療法の本に唯一、怒りがコントロールできない人たちの症例が載っていて「私これだ」って。

岡田:そこからグループワークに参加していただくようになったんですよね。

illustration 田房永子(AERA 2021年10月11日号より)
illustration 田房永子(AERA 2021年10月11日号より)

田房:一発でガラッと変わった感覚があったんです。精神科でも「その気持ちを旦那さんに話してみようよ」みたいなことで終わっちゃう。行動をこう変えてみなさいっていうのもあちこちで溢れているけれど、心に響かないんです。ゲシュタルト療法はそこのアプローチがまったく違っていて、外側からの変革ではなく、まず「私が私の事情を聴く」っていう姿勢を教えてもらったんです。

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