空港にたどり着いたアフガン市民の最終確認をする米海兵隊員/8月29日、カブールの国際空港(写真:米海兵隊提供)
空港にたどり着いたアフガン市民の最終確認をする米海兵隊員/8月29日、カブールの国際空港(写真:米海兵隊提供)
AERA 2021年9月13日号より
AERA 2021年9月13日号より

 米軍のアフガニスタン「撤収」をめぐるニュースが連日伝えられている。混乱状況での撤収はむしろ「逃亡」に近く、米国の現役・退役軍人からは批判も相次いでいる。一方で日本を翻って見ると、救出できたのは日本人1人のみという驚愕すべき結果が明らかになった。AERA 2021年9月13日号の記事を紹介する。

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 米軍関係者たちの間では、今回のアフガンでの敗北は、極めて深刻に受け止められている。米国の同盟国でも等しく深刻に受け止められており、同盟関係にも甚大な悪影響を及ぼしてしまうことは必至だと考えられている。

■中国は同盟国に警告

 実際に中国政府は、今回のバイデン政権による軍事外交的失策についてこう言う。

「米国による他国に対する選択的内政関与政策が失敗すると、いとも簡単にそれらの傀儡政府や軍を見捨ててしまうという米国の身勝手な歴史が繰り返された」

 台湾や南シナ海沿岸諸国、そして日本などの米国に軍事的庇護を期待している諸国に警告を発している。

 しかしながら、常に軍事的緊張に直面しているフィリピンや韓国、そしてベトナムなどはいざ知らず、日本ではアフガンでの米国の敗北、そして自ら育成・保護してきたアフガン政府や軍を見捨てて再びアフガン一般市民を苦境に追いやってしまった米国による逃亡劇にはそれほど関心が高くないようだ。

 その理由は、バイデン政権同様に日本政府の対外政策能力(外交能力+軍事能力+政府意思決定能力)の無能さが国際社会に曝け出されたため、政府もメディアも「あまりの恥ずかしさ」に口をつぐんでいるからなのかもしれない。

■日本は驚愕の1人救出

 日本政府は、アフガンに残留していた日本国民や日本関連の諸機関で働いていたアフガン市民たちおよそ500人を救出するため、航空自衛隊の輸送機3機と政府専用機1機、隊員約300人をカブールに派遣した。しかし、救出できたのは日本人1人のみという驚愕すべき結果であった。その他にも14人のアフガン市民をイスラマバードに移送したが、それらは米軍の依頼によるものであった。

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