■うれし涙は流さない

 バトンを託された橋本は個人総合で頂点に。五輪史上最年少の同種目制覇だ。種目別の鉄棒でも金メダル、団体総合では銀メダル。共同通信によると、10代で体操のメダル3個は史上3人目の快挙となった。

 橋本は個人総合の表彰台で笑顔だった。

「ここで(うれし)涙を流してしまうと、今の状態に満足していることになってしまうので」

 今回はゴールでなく、内村も達成できなかった個人総合3連覇へのスタートとなる。

 柔道でも日本勢最年少の21歳コンビ、女子52キロ級の阿部詩(うた)と同78キロ超級の素根輝(あきら)がすでにパリを見据えていた。

「3年後に向けてもうスタートしている。2連覇は簡単ではないが、努力したい」(阿部)
「パリ五輪に向け目の前の一つ一つを戦っていきたい」(素根)

 卓球混合ダブルスの初代金メダリストとなった伊藤美誠(20)も、銅メダルだった女子シングルスについて「悔しい気持ちのほうが大きいかな。99は悔しい」と雪辱を誓う。

■日本記録6秒以上更新

 陸上界にもスターが誕生した。男子3千メートル障害の三浦龍司(19)だ。予選では自身の日本記録を6秒以上更新する8分9秒92で、日本勢49年ぶりの決勝進出。その決勝では7位で日本人初の入賞を果たした。だが、こう言った。

「3年後の五輪で7位以上、自分の納得できる走りを、3年間で突き詰めていきたい」

 一方、早々と「現役引退」を表明した選手も。ボクシング女子で日本初の金メダルに輝いた、フェザー級の入江聖奈(せな=20)だ。

「有終の美で終わりたい。大学いっぱいでボクシングはやめるつもり」

 今大会の金メダリストの多くが5年前は無名だった。3年後は新星の誕生も期待したい。(編集部・深澤友紀)

AERA 2021年8月16日-8月23日合併号より抜粋