目が届きすぎるくらい子どもと関われる毎日は幸せでした。とはいえ、誰も褒めてくれないのが主婦業です。ふと「自分には何もない感」に引きずり込まれる瞬間がありました。子どもが巣立ったあとの人生は?と思うと怖かった。「だって専業主婦だもん」と、将来を見ないフリをしていました。

 そのころ唯一、自信を持てたのが毎日普通にやっていた片づけ。ママ友が家に来たとき、「片づいて気持ちのいい部屋だね」と褒められたのがすごく響きました。ママ友や子どもの友だちが集まれる部屋をつくることが、趣味のようにになっていきました。

 ここまでが、私の人生の「ビフォー」です。穏やかな生活は、10年前の2月に強制終了。夫がリストラに遭ってしまったのです。上の娘が高校、下の息子が中学に入る直前。夫の仕事が見つからず、先の見えない不安が続き、思春期の子どもたちの前で夫婦げんかをすることも増えました。

 私は生活のために、ヨガスタジオの受付の仕事に就きました。職場はピリついた空気の家から逃げられる場所。無駄に残業したりして生活は荒れ、するとなぜか得意な片づけも全くやる気が起きなくなったのです。

 夫婦関係は壊れ、40代半ばで再就職した私にこれら何ができるだろう。不安と世間体を気にして現実を直視できないまま2年が過ぎ……「そろそろしっかりしてよ」と、体当たりで教えてくれたのが娘と息子でした。

 ある朝、海外に留学していた娘から国際電話がかかってきました。
「どうせママ、忙しくなってご飯も作らなくなってるやろ?家だって散らかっているやろ?家、絶対におかしくなってるやろ?もう、私たちのために!っていう生活はやめて!!離婚していいから!!」
 この言葉でやっと決心し、夫に離婚を伝えることができました。

 離婚直後、「もう、家に友だち呼んでいい?」と息子が言い出しました。

 かつては友だち同士のたまり場だったのに、家がすったもんだしてから、私は息子に友だちを家に呼ぶことを禁止したのです。家が散らかった様子は誰にも見られたくない。そうやって問題を先送りにしたことを激しく後悔しました。中3の部活最後の打ち上げはウチでやろう!と、これを機に片づけに取り掛かりました。

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「片づけなんかでうまくいかない」と言われ