薬物使用者を貶め、“フラストレーションの生贄”に…日本社会のもつ異様さ 世界に逆行する大麻「使用罪」制定の動きも (1/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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薬物使用者を貶め、“フラストレーションの生贄”に…日本社会のもつ異様さ 世界に逆行する大麻「使用罪」制定の動きも

渡辺豪AERA
米コロラド州で2010年に開かれた大麻に関する展示会で並べられた様々な種類の大麻(写真:gettyimages)

米コロラド州で2010年に開かれた大麻に関する展示会で並べられた様々な種類の大麻(写真:gettyimages)

AERA 2021年7月19日号より

AERA 2021年7月19日号より

ポルトガルではハームリダクションで、ヘロイン依存者にメタドンを配布。ヘロインと同様の効果がある安価な液剤で、毎日飲めば離脱症状にならず普通の生活を送れる(撮影/編集部・丹内敦子)

ポルトガルではハームリダクションで、ヘロイン依存者にメタドンを配布。ヘロインと同様の効果がある安価な液剤で、毎日飲めば離脱症状にならず普通の生活を送れる(撮影/編集部・丹内敦子)

 国が大麻の「使用罪」創設に向け動き始めた。使用する個人の摘発強化が、本当に社会の「安心・安全」につながるのか。薬物問題の真の解決に取り組む人たちが、「取り締まる側の論理」に異議を唱えている。AERA 2021年7月19日号の記事を紹介する。

【写真】ポルトガルではハームリダクションで、ヘロイン依存者にメタドンを配布

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 厚生労働省の有識者検討会は6月、大麻取締法に「使用罪」を創設することなどを明記した報告書をまとめた。この動きに、薬物依存にかかわる支援団体や医師、弁護士らが相次いで懸念を表明している。主な反対理由の一つは、国際的な流れに逆行することだ。

「世界の薬物政策は懲罰主義から、非刑罰化・非犯罪化を原則とする公衆衛生アプローチに転換しており、『大麻使用罪』の創設はこれに逆行します」

 こう唱えるのは、国内外の薬物政策に詳しい立正大学の丸山泰弘教授だ。

 2010年に国連人権理事会と国連総会に提出された報告書は、「法執行政策と刑事制裁によって薬物のない世界を作るアプローチが失敗していることを示す科学的根拠が増えつつある」と指摘。「過剰な懲罰的アプローチは公衆衛生の目標を達成しておらず、数え切れないほどの人権侵害を引き起こしている」と警鐘を鳴らした。

「『反省を促す』という刑罰を土台に薬物使用をコントロールする政策は世界中で成果を上げられていないばかりか、本来サポートが必要な薬物使用者に対する社会的偏見を広め、人権侵害を引き起こしている、と警告する内容です」(丸山教授)

■厚労省の検討会が若年層で大麻の乱用が拡大と報告

「薬物使用者=犯罪者」というスティグマ(負の烙印)が社会に浸透すると、薬物使用者が医療にアクセスする機会も奪ってしまう。違法薬物の依存症患者が受診すると、警察に通報する医師も少なくないからだ。

「通報されるリスクがあれば、誰も怖くて受診できません。使用罪創設は薬物使用をやめたくてもやめられない人の医療アクセスをさらに困難にし、回復の機会を奪うことにつながります」(同)

 大麻を巡っては、所持や譲渡は違法とされているものの、栽培農家が成分を吸い込んでしまうケースなどが考慮され、使用罪は設けられていない。だが、厚労省は検討会で、栽培農家への尿検査で成分は検出されず、症状が確認されなかった、との調査結果を報告。「罰則を科さない合理的な理由は見いだしがたい」とした。しかし過去の国会答弁で国は、国際条約上、使用罪を置くことが求められていないことや、多くの先進国で使用罪は制定していないことも理由に挙げている。にもかかわらず、なぜ今、使用罪なのか。


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