5月11日の衆院本会議で、国民投票法改正案が賛成多数で可決された。6月半ばには参院本会議でも可決される見通しだ (c)朝日新聞社
5月11日の衆院本会議で、国民投票法改正案が賛成多数で可決された。6月半ばには参院本会議でも可決される見通しだ (c)朝日新聞社
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AERA 2021年6月14日号より
AERA 2021年6月14日号より

 憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案がまもなく成立する。この成立をめぐっては、これまで反対の立場をとっていた立憲民主党の動きが大きく影響している。AERA 2021年6月14日号で、その裏にある思惑に迫った。

【図】国民投票法改正案の主な内容はこちら

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#国民投票法改正案採決に反対します
#国民投票法改正案を廃案に

 4月下旬。SNSでこんなハッシュタグ(#)がついた投稿が一気に増えた。そのほとんどが、いわゆる護憲派の団体や個人によるツイートだった。

 そのころ、衆議院の憲法審査会で国民投票法改正案が採決される可能性が高まっていた。改正案は2018年6月に与党や日本維新の会などが共同提出。共産党とともに、8国会にわたり採決を拒んできた立憲民主党だったが「心変わり」ともいえる動きをして、局面が急展開した。

 それは大型連休前の4月28日。同党は与党側に次のような提案をした。

「広告放送及びインターネット等の有料広告の制限」などに関して、3年をめどに必要な法制上の措置を講じることを改正案の付則に加えれば、採決に応じる──。難しい文言が並ぶが、要は国民投票運動としてのテレビCMやネット広告の規制強化について、今回の改正法施行後3年をメドに、更なる法改正を含めたルール改変をすると約束してほしい、という内容だ。

■「国対マター」の修正案 与党がさっさと丸のみ

 この件は、いわゆる「国対マター」となり裏折衝が進んだのだろう。与党はそうした修正案をさっさとのみ、連休明け5月6日の衆院憲法審査会であっという間に可決。11日の衆院本会議では共産党を除く全政党が改正案に賛成した。法案は参議院に回され、いまは参院の憲法審査会で議論されている。それも6月半ばには、参院本会議で可決・成立する見込みだ。

 それではなぜ、立憲民主が改正案の賛成に転じたのか。枝野幸男代表や福山哲郎幹事長ら執行部の思惑は、おおむね次のようなことではないか。

「憲法改正の発議=国民投票の実施」に反対する護憲派の人々の支持(票)を得たいし、共産党の選挙協力を失いたくもない。だが、憲法本体の議論どころか国民投票のルール作りさえ拒む政党だと受け止められては、護憲派以外の有権者の支持は得られない──。

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