年頭記者会見に臨む菅義偉首相。小池百合子都知事らの要請に押され、緊急事態宣言の検討を表明することになった/1月4日、首相官邸 (c)朝日新聞社
年頭記者会見に臨む菅義偉首相。小池百合子都知事らの要請に押され、緊急事態宣言の検討を表明することになった/1月4日、首相官邸 (c)朝日新聞社
AERA 2021年1月18日号より
AERA 2021年1月18日号より

 感染抑制より経済対策を重視してきた菅首相がついに緊急事態宣言に踏み切った。判断が遅れた背景にあるのは、高支持率をテコに政権を維持する政治姿勢だ。AERA 2021年1月18日号の記事を紹介する。

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 まだ大勢の記者が挙手をしていたにもかかわらず、わずか30分で打ち切られた1月4日、年始恒例の首相記者会見。菅義偉首相の表情は冴えず、会見終了後は逃げるようにして足早に会場を後にした。

 菅首相はこの会見で初めて緊急事態宣言の発出を検討すると表明した。前年12月25日の記者会見では宣言に否定的な態度をとり、1月1日に発表された年頭所感では、その言葉にさえ触れていなかった。なぜ4日になって態度を一転させたのか。

 その要因が「新規感染者数の増大」であることは明らかだ。驚くことに、当初、官邸の読みは「年末年始、新規感染者数は減少する」と真逆だった。1月4日夜、民放テレビの生放送に出演した菅首相は「年末年始において陽性者数が少なくなるだろうと考えていた」と発言している。菅政権の対応の遅さには身内の自民党からも厳しい声があがっている。

「そんな悠長なことを言っている場合ではない。国家の危機を前に陣頭指揮を執るリーダーとして、現状把握能力に欠けた致命的な発言だ。この発言が本心だったとすれば、政権の危機管理は相当危ういのではないか」(自民党関係者)

■無策が招いた感染拡大

 発言の根拠は不明だが、考えられるのは昨年11月25日、西村康稔経済再生担当大臣を先頭に「勝負の3週間」と銘打って講じた緊急対策だ。この時の目玉が「飲食店に対する営業時間の時短要請」だった。

 大見得を切ったものの、その後も新規感染者数は増大。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は「個人努力に頼るステージは過ぎた」(11月27日)、「人々の動きと接触を短期間で集中的に減らすことが、感染の沈静化には必須」(12月6日)と警鐘を鳴らし続けたが、菅首相は肝いりの「GoToトラベル」を頑なに継続し、結局、全国一斉停止に踏み切ったのは12月14日だった。

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