感染抑制策の結果は、約2週間後の新規感染者数に反映される。「勝負の3週間」で結果が出ないのであれば、その時点で具体的で実効性のある次のプランを提示するべきだった。立憲民主党の福山哲郎幹事長は、この間の菅政権の「無策」が感染拡大を招いたと憤る。

「野党は12月2日に新型コロナウイルス対応の特別措置法改正案を提出し国会の延長を求めましたが、菅政権は一顧だにせず国会を閉じました。もし延長国会で緊急事態宣言に伴う補償の議論がされていれば、その後の第3次補正予算に補償の財源を組み込むことができた。補償の財源も想定されていない今の曖昧な状態では、営業制限を強いられる飲食店サイドも、納得して受け入れることができない。全ての判断が遅く、後手だとしか言いようがありません」

 菅首相に近い自民党議員の一人は、首相はそもそも経済優先がモットーで、経済に負荷のブレーキをかける政策には二の足を踏む慎重派と話す。しかし、ここまでコロナ対策が後手に回る原因は、もしかすると他にあるのではないかとこういぶかる。

「前政権の途中から、コロナ対策は西村大臣が中心で、菅さんは蚊帳の外だった。首相になっても、何でも自分で判断すると公言している故に、もしかすると官僚や専門家があげてくる複雑なデータや数値、感染症医療の知識、これまでの政策の連続性などをのみこめていないか、菅さんの元に正しい情報があがっていないのかもしれない」

 別の政府関係者は、菅首相が気にしているのはコロナ感染者数ではなく政権支持率ではないかと推測する。

「安倍政権であれだけのスキャンダルがあっても退陣に追い込まれなかった要因は、政権支持率が一定程度維持できたこと。総理自身、自分も官房長官としてそれに貢献したと周囲に吹聴しています。だからこそケータイの値下げやデジタル庁の新設など支持率には決してマイナスにならない目先の政策にこだわる。半面、『自分が悪役になってでも日本の危機を救おう、出来ないときは潔く辞任しよう』という発想はそもそもないのではないか」

※【小池都知事、緊急事態宣言要請で責任転嫁? 「犬猿の仲」菅首相と責任のなすり合い】へ続く

(編集部・中原一歩)

AERA 2021年1月18日号抜粋