徴用工やGSOMIAの問題など「戦後最悪」とも言われる日韓関係。だが、菅政権発足後、韓国が日本に「ほほ笑み」を送る。果たして、その理由とは。AERA 2020年12月7日号の記事を紹介する。
【写真】平昌冬季五輪での北朝鮮の金与正氏(右端)と韓国の文在寅大統領(左端)
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今年の11月23日は何事もなく過ぎた。この日は、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の期限にあたる。ちょうど1年前、韓国は日韓GSOMIA破棄を一度は通告したものの、土壇場になって破棄の暫定的な凍結を発表した。徴用工訴訟判決の解決に乗り出さない韓国にしびれを切らした日本が2019年夏から輸出管理措置の厳格化で対抗。GSOMIA破棄は、韓国が日本の措置に逆ギレして起こした騒動だった。
それから1年。日韓の間で徴用工判決も輸出管理措置も何も解決していない。むしろ、差し押さえられた被告の日本企業の韓国内資産の現金化が刻々と迫っている。韓国にしてみれば「GSOMIAはいつでも破棄できるから、あえて延長云々(うんぬん)と言わないだけだ」(政府関係者)という論理なのだろうが、1年前のような騒々しさが消えたのも事実だ。
逆に、韓国は最近、日本に対して立て続けにほほ笑み外交を仕掛けている。
先陣を切ったのは韓国情報機関トップ、朴智元(パクチウォン)国家情報院長だ。朴氏は10日、菅義偉首相と会談。菅首相の著書『政治家の覚悟』を持参し、サインをせがんだ。13日には、韓国の国会議員でつくる韓日議員連盟の金振杓(キムジンピョ)会長らが菅首相と会談し、「(徴用工問題で)両国首脳が決断しやすい環境づくりを目指していきたい」と胸を張った。
■日本は従来通りの対応
そして文在寅(ムンジェイン)大統領は14日、オンライン形式で行われた「東南アジア諸国連合(ASEAN)+日中韓」首脳会議の冒頭、「尊敬する議長、各国首脳の皆さん。特に日本の菅首相、お会いできてうれしいです」と語った。10カ国以上の首脳が出席するなか、異例のあいさつになった。
この間、日本が特別優しかったわけではない。