答弁には菅義偉首相ではなく西村康稔経済再生相が立ち、全国の知事らとともに対策を強化してきたと主張。福山氏にとって納得できる答弁ではなかったようだが、その前日、政治アナリストの伊藤惇夫氏は取材にこの問いへの答えを口にしていた。

「一時的に感染が収まっていたので国民も政府もホッとしたのかもしれません。安倍(晋三)前総理が『日本モデル』などと不可解なことを言っていましたが、日本はある意味、努力しなくてもある程度の制御ができるというふうに考えてしまったのかもしれません」

 しかし、これ以上は対策を先延ばしにすることはできない。

■嫌がられても提言する

 政府の感染症対策分科会も25日、新たな政府への提言を公表した。20日にも飲食店の営業時間の短縮や感染拡大がみられる地域への移動の自粛などを盛り込んだ提言を行っており、短期間の相次ぐ提言は事態が差し迫っている証しに他ならない。

 分科会の委員の一人は、こう明かす。

「20日の提言も官邸側には不快に思われていると聞いています。ですが、この現状では、嫌がられたとしても再度の提言をしなければいけないタイミングだったということです」

 厳しい状況を感じさせる要因の一つは、すでに数値を使った医療機関のモニタリングさえ困難な状況になりつつあることだと委員は考えている。

「重症者の数はそれほど増えていません」
「病床にはまだ余裕があります」

 この間、幾度となく政治家たちから聞いた言葉だが、その裏には数字からは想像できない現場があるのだという。

「病床占有率がいつ30%から100%になるかも分かりません。重症者数があまり変わらないと報道されていますが、実際の医療現場では、短期間に患者に挿管と抜管を繰り返すという負担がかかっています」(委員)

 このまま強い感染制御策をとらなければ、通常の医療との両立が困難になるはずだ。

「市民の皆さんは次第に理解し始めていると信じたいですが、官邸はその実感を持っていないように感じます」(同)

※【コロナ対応で繰り返される政府の責任放棄 分科会の提言から「消えた」言葉】へ続く

(編集部・小田健司)

AERA 2020年12月7日号より抜粋