3連休の初日となった11月21日、紅葉が見頃を迎えた京都は観光客でにぎわった (c)朝日新聞社
3連休の初日となった11月21日、紅葉が見頃を迎えた京都は観光客でにぎわった (c)朝日新聞社

 新型コロナの第3波が到来するも、政府は国民任せ、経済優先で感染対策に遅れが出ている。一方で、医療現場では想像以上の負担がかかっているという。感染制御策が急務だ。AERA 2020年12月7日号で掲載された記事を紹介。

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 全国の行楽地がにぎわった11月下旬の3連休、東京都の女性(43)は、夫(45)と3人の子どもたちと京都で2泊の関西旅行を予定していた。

「Go To トラベル」でホテルを予約したのは、9月に東京の追加が決まって間もないころ。11月下旬は寒さで感染が広がる心配はしていたが、当時は少し気持ちが緩んだ。移動は車で、5人で約12万円の宿泊費は実質半額となっていた。

 だが、予想通りに感染者は増えた。高まる不安。出発する2日前の19日、夫妻は中止を決めた。その日、都内の感染者は初めて500人を超えた。前日には、日本医師会の中川俊男会長が「我慢の3連休」を訴えていたのも響いた。

■不可解な「日本モデル」

 旅行の目的の一つは、小学4年の長男(10)に、京都の神社仏閣を見せて歴史の勉強に役立てることだった。

「悲しむだろうな」

 夫婦はそう考えながら中止を告げると、長男はポロポロと涙を流した。ただ、涙の理由は予想と違い、長男はこう話した。

「中止と決めてくれて、ホッとして涙が出てきた」

 小学4年の児童にも、日々のニュースで状況が分かっていた。夫妻もその状況を判断して中止を決めたわけだが、女性はこれまでの経緯を振り返ると腑に落ちない点もあるという。

「政府からは感染防止のための強いメッセージがありません。むしろやっていることは『コロナはもういいから経済を回せ』というふうに受け止められます。適切ではないメッセージが伝わっていないでしょうか」

 菅政権が発足したのは9月16日。就任会見では、新型コロナの感染拡大の阻止と、経済再生の両立を最優先の課題と位置づけた。

 当時、国内全体の日ごとの感染者は500人前後で推移しており、平日には2千人を超え始めた11月とは状況が違った。実際には、感染防止は国民一人ひとりの意識に委ねる一方で、政府は経済活動の活発化に軸足を移していたといえるだろう。

 11月25日に開かれた参議院予算委員会。質問に立った立憲民主党の福山哲郎幹事長は声を張り上げた。

「何で総理、この(感染者の)山が高くなっているのに対策を打たなかったのか、教えてください」

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