中止された大学のインターンプログラムは、来年の秋に再開予定になった。いまは就職活動に専念し、来秋行けるようにしたいと伊藤さんは願っている。

 文部科学省の2018年調査では、11万人以上の大学生が留学やインターンで海外に渡航している。しかし、新型コロナの影響で渡航が難しくなったことから、大学や語学学校は続々とオンラインにシフトしている。

 就業を体験するインターンについても、オンライン化の動きが出始めた。伊藤さんに案件を紹介した、海外インターン大手のタイガーモブの古田佳苗さん(27)は言う。

「今年、100人がインターンで海外に渡航予定でしたが、全て中止になりました。この人たちのために何かできることはないか。受け入れ先企業とも相談し、4月中旬、オンラインのインターンを始めました。今では60社以上からオファーがあり、150人以上が参加しています」

■高校1年生も参加

 オンラインでのインターンはビデオ会議などでの業務参加が中心になり、現地での生活体験はできず、携わることのできる仕事も限られる。だが、渡航費や滞在費がかからないため手軽というメリットがある。日本での生活と両立しながら参加できるため、社会人や高校生など新たな層も加わった。

 長野県の諏訪清陵高校1年の國枝蒼太郎さん(15)の一日は、朝4時50分に始まる。インターン先のインドとは3時間半の時差があり、夜送られるメッセージを受信するのは深夜になるため、生活を朝型に変えた。國枝さんは言う。

「貧困女性の経済的自立を図る家事代行のソーシャルビジネスに携わっています。本当なら、今年7月にインドに行き3カ月間、別のソーシャルビジネスのインターンに就く計画でした」

 平日は高校の授業があるため、帰宅後の時間を仕事に充て、週に3~4時間ほどフレキシブルに働いている。最初に手がけたのは、家事代行の予約や決済のオンラインシステムの構築だ。プログラミングが好きで、その知識や技術が生きた。次に任されたのが、グーグルへの広告出稿だ。広告コピーや画像の試行錯誤を重ね、週の初めにはその週の家事代行の予約が全て埋まるようになった。さらに法人需要の取り込みが必要と考え、企業向けの提案書も作成。現地ではいまその受け入れ態勢を整えている。國枝さんは言う。

「事業に携わるほどにインドに行きたい思いは募ります」

 一方、オンラインのインターンには細く長く関わることができる利点があるという。いまの経験をベースに、現地に渡航できるようになったらさらにステップアップしたいと考えている。(編集部・石田かおる)

AERA 2020年11月23日号より抜粋