出産前までは仲の良かった夫婦が、「子育て」をきっかけに互いの価値観がぶつかり、すれ違ってしまうのはよくあること。子どもが成長するにつれて、「子育ての方針」を夫婦で話し合おうと思っても、うまくいかないこともあります。そこで、「AERA with Kids 秋号」(朝日新聞出版)では、感性アナリストで男女の脳に詳しい黒川伊保子さんに取材。夫婦がコミュニケーションをとるうえでの心がまえやコツをうかがいました。
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 黒川さんは家庭内の会話に必要なのは、正しさよりも思いやり、つまり「心の対話とちょっとしたコツ」だといいます。

「夫婦で脳の使い方が違うと、議論が成り立たず、お互いを認め合うことはなかなか難しい。そこで日ごろの接し方や会話のテクニックがコミュニケーションをとるうえで大切になってきます」

 日頃からどのようなことに気をつければいいのでしょうか? 夫婦のコミュニケーション基本3カ条を以下にまとめました。

1 「ほめる、気遣う・ねぎらう、感謝する」を大切に

夫婦でも相手を人として尊重するのは最低限のマナー。「その髪形いいね」(変化に気づきほめる)、「疲れたでしょう?」「残業大変だったね」(気遣う・ねぎらう)、「ゴミ捨てありがとう」(感謝する)など、この3点に注意した言葉がけをするだけで、家の中の雰囲気は驚くほど良くなります。

2 意見が合わないときも相手のデメリットを攻撃しない

夫婦で意見が異なるときは、相手のデメリットを突くことで自分の「正しさ」を訴えがち。相手の心に響かせるためには自分の意見のメリットを訴えること。たとえばお受験に反対する場合、デメリットとなる経済問題を持ち出すのではなく、「公立なら近所で遊べる友達ができる」といったメリットを訴えます。

3 欠点を補う関係と心得ておく

夫婦は二つの軸があるからいいのであって、一方が完璧である必要はありません。いい妻、いい夫であり続けようとするよりも、欠点や短所を見せ合って補ってもらうくらいのほうがいいのです。一人で頑張りすぎて時々爆発してしまうくらいなら、相手を頼る努力をするほうが長い関係においては大切です。

 続いて、実際にコミュニケーションをとる際に役立つトリセツを紹介します。

<妻から夫へのトリセツ>

◎夫の視界に入ってから話しかけ、2~3秒後に本題へ

リビングのソファで、次なる危機に備えて休息中の夫の脳は、完全オフ状態。突然話しかけられても聞こえていないことがほとんど。まずは夫の視界に入ってから名前を呼び、夫の認識機能をオンにしてから、話し始めるといいでしょう。

◎「3点笑顔」主義でいつも笑顔の印象に

男性は「世界を定点で観測する」傾向があります。つまり、「おはよう・いってらっしゃい・おかえり」の3点だけに気をつけて笑顔でいれば、「妻はいつも笑顔」の印象になるのです。夫婦の生活リズムに合わせて、3点の内容は変更してもOK。

◎子育てや家事の担当を決めて、一つのことを任せる

こまごました家事・育児のタスクを「察してこなせる」男性はそういません。だったら「食材の在庫管理」「週末の子どもの送迎と買い出し」など、夫が得意そうな任務を厳選して、すべて相手に任せましょう。夫なりの方法で達成してくれるはず。

<夫から妻へのトリセツ>

◎日常のささいな出来事を話す

共感型脳を使う妻にとって、おしゃべりこそ、共感欲求を満たすストレス解消法であり、情報を蓄積する大切な行為。「今日自分の身に起きたささやかなこと」を話してみましょう。

◎妻の小言は事故を防ぐため。素直に謝る

「靴下を脱ぎっぱなし、コップを出しっぱなし」などの小言。妻の脳は子どもが転ぶかも、コップが割れるかもと事故を想定し、不安をためます。爆発される前に素直に謝って。

◎「妻の味方」だとアピールする
嫁姑問題が起きたら、夫がとるべき道はただ一つ。あくまでも妻の味方でいること。子どもと妻がぶつかるときも同じ。「パパの好きな人をそんなに責めないで」などとユーモアを交えて。

(取材・文/玉居子泰子)

※発売中の「AERA with Kids秋号」では、花まる学習会代表の高濱正伸先生を特別編集長に迎え、今の時代に欲しい「子育ての軸」について大特集しています。軸の決め方や叱り方、思春期の子どもへの接し方などについて詳しくまとめています。

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玉居子泰子
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