今回は何があったのか。その一端を知るのが、学校休校に伴う補償の問題で菅官房長官に国会で質問した寺田学衆議院議員(無所属)だった。寺田議員は今回の持続化給付金でも対象範囲の見直しを求めているが、5月ごろ、こんなやり取りがあったという。

「中小企業庁の前田さんに直接連絡をしたのですが、『それは難しい』とけんもほろろでした。取り付く島もなかった」

 前田さんとは、「前田ハウス」で名が知られた前田泰宏長官だ。大臣官房審議官だった2017年、米国での催しに参加した際、「前田ハウス」と名付けた近くのアパートでパーティーを開き、持続化給付金事業を受注した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」の理事を務める電通関係者と同席していたことで批判を受けた。

 寺田議員はその後、菅官房長官と直接連絡を取りながら、「法令に従って届け出もして、納税もしているのに給付が受けられないのはおかしい」と訴えた。これを機にいったんは対象の見直しについて政府内の了解がまとまりそうになったというが、最終的には与党・自民党の了承を得られなかったようだ。

「国民の理解が得られない、という話でした」(寺田議員)

 納税していない業者がいることも影響したかもしれないが、寺田議員は厚労省と経産省の事例の違いを端的にこう指摘する。

「学校休校の補償は政府だけの判断で事が動きましたが、今回は与党プロセスに乗せてしまったことで、厚労省のようには進みませんでした。自民党の政務調査会が認めなかったと聞いています」

 これは事実なのか。アエラは自民党政調会長で総裁選への立候補を表明している岸田文雄氏と中小企業庁に経緯の説明を求めたが、4日までに回答はない。(編集部・小田健司、川口穣)

AERA 2020年9月14日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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