「不給付に合理的な理由が本当にあるのでしょうか。中小企業庁は、『これまでもずっと国の給付の対象外だったから、そことの整合性』と言っていますが、過去の取り扱い自体が正しかったのかどうかそもそも疑いが残ります」(亀石弁護士)

 現在、公共性の高い課題に取り組む訴訟について社会で支えようと弁護士らが昨年立ち上げた「CALL4」のサイトで、訴訟費用を募っている。

 風俗業で働く人向けの法律相談事業「風テラス」を手がける「一般社団法人ホワイトハンズ」(新潟市)の坂爪真吾代表は、今回の性風俗事業者の処遇に「またか……」と感じた。新型コロナで新設された支援制度で一部の風俗関係者が除外されたケースは、今年4月にも問題になっていたからだ。

 感染拡大を防ぐための学校休校に伴って、厚生労働省が新設した「小学校休業等対応支援金」制度。学校に行けなくなった子どもの世話のために働けず、所得を失ったフリーランスの保護者らが対象だったが、性風俗店やキャバクラなどで働く人たちが除外された。

 批判を浴び、菅義偉官房長官が国会で「見直しを検討したい」と発言し、軌道修正した。厚労省と経産省の支援制度では対象外となった人も異なるが、一部の風俗産業の労働者が除外されていた点は同じだ。

「厚労省の補償制度はキャバクラなど水商売も含めた話だったので同情が集まりやすかったのですが、今回、対象から外されたのは性風俗の事業者です。世間的な関心が集まりにくいのかもしれません」(坂爪さん)

 風テラスも8月に2回、提訴に関する事業者向けのオンライン説明会を開いており、支援のあり方を模索しているという。

■自民の政調会が認めず

 国の支援対象の決め方について、政治評論家の有馬晴海さんは「厚労省や経産省がどんな決定をしても、政治家が『違う』と言えば、ひっくり返ります。役人は情報を集めて提案するだけです。支援の範囲をどうするかというのは政治家のその時々の判断であって、瞬発芸みたいなものなんです」と説明する。

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