ところが在学中に、大正から昭和にかけて建てられた鉄筋集合住宅の名建築、同潤会青山アパートの保存運動を通じて新築よりも再生に傾倒するようになった。大学院を修了して設計事務所に就職したが、3年で退職。「建てたがらない建築家」として古民家再生に取り組み、セルフリノベーションのワークショップやトークイベントを手がけ、発信力も磨いてきた。そうしてキャリアを積み重ね、たちと出会ったのも思えば運命だったのだろう。今では暮らしがすっかり猫中心になり、保護猫の里親探しや預かりボランティアもするようになった。

「空き家を抱えて困っている人と、猫と一緒に住みたいという人をうまくマッチングしたい。空き家や廃虚を直して猫と住んでもらったり、猫と暮らせる住まい探しのお手伝いができればと思っています」

 すでに猫と暮らしている人にも、これから同居を考えている人にもおすすめな、心温まる一冊だ。

(編集部・大平誠)

■八重洲ブックセンターの川原敏治さんオススメの一冊
『スキルペディア 360度の視点で能力を哲学する絵事典』は、本質的な“スキルアップ”の意義を教えてくれる一冊。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 リーダーシップや、ファシリテーションなどのハウツー本が多数出版されているが、本書の特徴は、そういった一般的な「スキル」だけではなく、「みる力」「読む力」「想う力」「伝える力」など、一見するとスキルとしてはこれまで認知されにくかった能力もスキルとして分類し、丁寧に解説していることだろう。

 変化の激しい現代においては、変化についていくことに精いっぱいになり、目先の仕事をこなすためのスキルを追い求めてしまいがちだ。しかし、本書が重要視するのは、スキルはあくまで手段であり、スキルアップすることそのものが目的ではないということ。本来、スキルアップで目指すのは、自分の意識や物の見方を変え、軸となるものを作り、仕事だけではなく、生き方を向上させていくことにある。スキルとは何か、スキルアップの意義を教えてくれる一冊。

AERA 2020年8月10日-17日合併号