稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
去年の今頃行った台南の市場で入手した可愛いレジ袋をついに使う……(写真:本人提供)
去年の今頃行った台南の市場で入手した可愛いレジ袋をついに使う……(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】台南の市場で入手した可愛いレジ袋

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 今月からレジ袋が法律で全面有料化され、SNSなどを見ると「プラスチック削減にどれほど効果があるのか」「ゴミ出しのためわざわざゴミ袋を買うことになるので意味がない」などの議論が再燃している模様。

 だが「一人プラゼロ運動」を始めて5年ほどになる身としては、今後はレジで慌てて「袋いりません!」と言わなくていいと思うとホッとする以外の何物でもない。何しろ我が国の袋詰めサービスたるや本当に完璧で、わずかな隙も許されぬ。息を吸っている間に袋入り。断っても断っても袋の山。そもそもゴミを極力出さない生活なので、ゴミ袋として利用しても使い切れない。そのストレスからやっと解放される日が来たのだ。

 ……と思っていたんだが、先日、たまったレジ袋のストックを点検し、あと3枚であることが判明した。いや……案外少ないな。確かに振り返ってみれば、法施行を前に袋の有料化に踏み切る店が増え、それ以外の店でも「袋いりますか」と聞かれることが多くなっていた。我が袋の山は少しずつ低くなっていたのだ。

 で。今後は袋、一枚ももらえなくなるわけですよね。

 となると……これから我がゴミ出しはどうなるのか。3枚を使い切った後は? ま、まさか、プラゼロ運動をしている私がプラ袋を買うはめに?……余裕をかましていたはずが一転、焦る。焦りまくる。我ながらバカである。

 で、懸命に考えた。考え抜いた。そして笑い出したくなるほど単純な結論に達したのである。

 私がいまだに削減しようにもしきれないでいるプラゴミはほとんどが袋なのだ。レジ袋ではないが、野菜の入った袋、本の入った袋、乾物の入った袋。いやいや袋だらけじゃないですか。だからこそこんなに努力してもプラゴミをゼロにできずにいるわけで。袋は袋。袋に貴賎なし。まあちょっと小さめではあるが、そもそもゴミ量が少ないので週に一度ならこれで十分である。あっという間に一段落。自分はバカなのか天才なのかわからなくなる。

AERA 2020年7月20日号

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稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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