最近、この小説の描く悲観と楽観をより深く理解するに至った。きっかけは、新型コロナウイルスの拡大だ。不安材料ばかりが増え、安倍首相の会見を見てもちっとも安心できない。だから悲観はリアルさを増しているのだが、楽観こそがより実感できた。

 前提にあるのが、今のままではダメだという思いだ。「AAゴールデンエイジ」が提示した解が、芦田愛菜さんと愛子さまという「女子」だった。ジェンダーギャップ指数が世界121位の日本、男子ではもうダメなのだ、と。

 もう一歩、考えを進めると、メインストリームにいる人に託しても、もうどうにもならないということではないだろうか。劇的な変化は、メインストリームの外からしか起こらない。昨今の政治を見ていると、しみじみそう思う。だが、現実が重すぎて、政治にも経済にも解が見つからない。

 その点、皇室はどうだろう。愛子さまがいるではないか。男系男子の皇室で、メインストリームの外にいる女性皇族。だからこそ愛子さまが天皇になれば劇的で、すごい効果が得られるに違いない。そう思うと、心が明るくなる。

 ああ、これが「AAゴールデンエイジ」の楽観なのだ。そう実感させてくれた、重苦しい20年度の幕開け。「立皇嗣の礼」の後、安倍政権は本当に何の議論もしないのだろうか。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年4月13日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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