2020年度から、いよいよ小学校でのプログラミング教育が始まります。いろいろな情報や臆測が飛び交うなか、小学生の親が今知っておきたいこととは? 「AERA with Kids秋号」(朝日新聞出版刊)では、社会や公教育の動向、親の心構えまで3人の専門家に話をうかがいました。

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 お話をうかがったのは、小学校のプログラミング教育を推進する文部科学省の中川哲さん、プログラミング教育の普及・支援活動に取り組むNPO法人みんなのコードの利根川裕太さん、エンジニア志望の学生の就職支援などを行う株式会社サポーターズの楓博光さん。それぞれの立場からプログラミング教育や社会の現状について教えていただきました。

1.日本のプログラミング教育は諸外国と比較して遅れている

 学校教育の制度は国ごとに違います。プログラミング教育先進国のイギリスでは1995年からITリテラシー教育が始まり、2014年から「コンピューティング」という教科を設置。プログラミング作成の基礎である、問題解決のための手順「アルゴリズム」の理解やプログラミング言語の習得など、本格的なプログラミングを学習させています。ハンガリーやロシアも2000年代から独立した教科としてプログラミングを学習させていますが、IT先進国のエストニアは、学校裁量という形でプログラミング教育を実施しています。フィンランドでは今回の日本のように、教科横断的な形でプログラミングが取り入れられています。

 20年度から小学校でプログラミング教育を始める日本はその第一歩をやっと踏み出したところです。新学習指導要領には、5年算数、6年理科、総合的な学習の時間での実施が例示され、算数や理科の教科書でも扱われていることから、少なくともこの3教科等ではプログラミングに触れるだろうと考えられています。(中川さん)

2.あらゆる業種でプログラミングできる人材の需要が高まっている

 テクノロジーが生活に不可欠となった今、IT系のエンジニアはIT業界だけの特殊な仕事ではなく、あらゆる企業、業種が求める人気の職種です。転職求人倍率レポートによると、通常の職種の求人倍率が約1.5倍程度なのに対し、エンジニアは約8倍。1人のエンジニアを8社が奪い合っている状況にあります。なかでも実践的なレベルをもつ学生エンジニアの価値が高騰し、労働環境や給料面において高条件が提示されるなど、親世代がエンジニアに抱いていた「仕事がきつくて大変」といったネガティブなイメージとは違ってきています。

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高橋亜矢子
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