高濱:じゃあ、アートに目覚めたのは?

水野:実は僕、小5のとき交通事故にあってるんです。ひざの靭帯を切って、成長期のためデリケートな手術が必要で、2カ月くらい入院しました。退院後も野球はやれず、といって勉強なんてもっとやる気になれず(笑)。

高濱:生活がガラリと変わった。

水野:一人っ子だったので、自然と一人遊びに向かって絵を描くようになりました。絵といっても図面みたいなものです。住みたい家の設計図やら迷路やら。

高濱:迷路! 自分で? 迷路つくれる子どもはいいんですよ!(笑)

水野:そうなんですか? そうか、よかったんだ(笑)。方眼紙を使ってけっこう精巧なものをつくってました。500~1千くらいはつくった記憶があります。

高濱:素晴らしい! 迷路ってほんと、ひとつの才能なんです。とんでもなく集中力が必要だし。

水野:パズルやプラモデルにも熱中しました。バイクを分解して再度組み立てたこともありましたね。50ccのカブですが。

高濱:好奇心と集中力。子どもに必要な2大要素はバッチリですね。美大を目指したのも、その延長線上?

水野:勉強は全くしなかったんですが、中学の美術の先生が面白くて美術に興味を持って。それこそ「この絵はどうしてこういう絵になったんだろう」と考えさせてくれる先生だったんです。

高濱:好きな先生の授業は好きになる。これ、すごく大切。

水野:社会に出てからのことも考えましたよ。グラフィックデザイン学科を受けたんですが、それが一番つぶしがきくだろうというのが理由。大学ではバイトと旅行にあけくれて。バックパッカーとしてヨーロッパをまわったり。

高濱:海外旅行、いいですね。

水野:実は卒業したあとデザイン会社に勤めたんですが、2年でやめて、その後また2カ月間海外を放浪しました。今の会社を立ち上げたのはそのあとです。

高濱:バックパッカー経験者は、起業家に多いですよ。動物的感覚がとぎすまされるというか。

水野:はい。先ほどから子どもに必須の好奇心というキーワードが出ていますが、僕は何に興味を持つかという中身より先に、入れるハコをつくるといいのではと思っています。旅は、そのハコをつくるのに最適でした。外的な刺激をたくさん受け、いろいろな経験を面白がる。そんなハコを最初につくっておくと、好奇心を育てられる気がします。

(構成・文/篠原麻子)

※「AERA with Kids 秋号」より一部抜粋

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2019年 秋号 [雑誌]

安浪京子,高濱正伸,tomekko

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篠原麻子
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