水野:デザイン関連の仕事を20年以上続けてきてしみじみ思うんですが、この業界は特殊技能者の世界のせいか、面白い人が多いんです。やっぱり人は得意なことを伸ばすほうが圧倒的にいいんじゃないでしょうか。優秀な人って、頭の良しあしではなく、自分の好きなことをちゃんと見つけてそれを続けてきた人なんじゃないかと。

高濱:僕の周りのかっこいい大人は、みんなそうですね。聞いてみると、子どものころから好奇心と集中力に満ちあふれた生活を送っている。そういう経験をせず、記憶型、詰め込み型の勉強だけで大きくなると、面白く、優秀な人は生まれにくい。今や東大でさえ、これからは官僚型よりもっととがった人が欲しい、みたいなことを言っていますよ。こちらとしては、今さら……と(笑)。まあ、いろいろな意味で転換期です、現在は。

水野:こういう仕事をしていると、アートのセンスって持って生まれたものでしょってよく言われます。でも僕に言わせればアートは言語化できるし、訓練で伸ばせるんです。トータルにきちんと学んで積み上げていけば身につくものだと思う。だからこそ教育が必要なのになあ。

高濱:子どものうちからアートを学べば、社会に出てから美意識を武器に仕事ができる大人になるということですね。

水野:そう思っています。

高濱:ということは、水野さんも子どものころからアートに接していた?

水野:あ、いやいや……(笑)。ただのわんぱく野郎でした。小学生時代は野球少年で、中高時代はやんちゃのはしくれ。

高濱:おかあさん、泣かせましたか?

水野:いや、母は「やれ」「やるな」みたいな言い方をしないんです。「人としてどうなんだ」「どう生きるんだ」みたいなことにはものすごく厳しかったけど。

高濱:ほお、かっこいいですね。

水野:そういえば、父が突然仕事を辞めてきたことがあったんですが、そのときも母はものすごく激怒したあと、じゃあ3人で北海道に旅行しよう、みたいな提案がカラッとできるような……ある意味、母が一番やんちゃだったかなあ。

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